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2021年7月26日 (月)

秘めたる人生の2

Kenya

東京オリンピックの女子バレーを観ていたら、ケニアの選手が出てきた。
日本の選手にも籾井あきのようなかわいい子はいたけど、ケニア選手のほうがかわいい子の割合は高かった。
これじゃポール・セローが女狂いをするのももっともだ。
なんだ、そりゃといわれそうだけど、彼の小説「わが秘めたる人生」を読んでそう思った。

この小説は、主人公のアンディという若者が米国にいるところまでは小説らしいのに、平和部隊に入ってアフリカに派遣されたあとは、まるっきりノンフィクションになってしまう。
先にアフリカ紀行のほうを読んだのがいけないのかもしれないけど、米国では背景にしても登場人物にしても、多彩で、ひねってあって、いかにもフィクションであるという感じがするのに、アフリカでは起こったことをたんたんと描いているだけのような気がするのだ。
アメリカ時代は、不良の友人たちにからかわれるちょっと控えめな青年だった主人公が、アフリカに行ってからは、作家のセローそのものの元気で社交的な人間になってしまう。
そのへんのつながりがしっくりしないのがこの本の欠点で、いろいろな体験をしつつ、成長していく人間の物語だろうというわたしの予想ははずれた。

アフリカのニヤサランドに教師として赴任したアンディの境遇を説明しておくと、教養のある白人の彼は、家つき料理人つきという特別待遇で、学校に到着するとすぐに校長に任命される。
1964年のことで、アンディはこのとき23歳だった。
この時代背景も作家のセローにぴったり重なるので、書いてあることはほとんどじっさいにあったことなのだろう。
ふつうなら青二歳といっていい歳ごろだけど、理想にもえる校長の権限でもって、校舎まわりを整備したり、不潔だったトイレも新しくして、生徒の評判はわるくなかったようである。

アンディ校長は、平日は熱心に働き、週末は町のバーに入りびたり、すぐに店にごろごろしている娼婦たちを自宅にひっぱりこむようになった。
娼婦のなかには15歳ぐらいの娘が普通にいた。
日本で校長がそんなことをしたらスキャンダルで、たちまち教師失格だけど、アフリカでは周囲の男も女もみんな同じことをしている人間ばかりだったから、彼は相手をとっかえひっかえしてセックスしまくった。
体を売るのは貧しいアフリカ女性の特権で、彼女たちは早熟で短命なのだと、人種差別と受け取られかねないことまで平気で書いてある。

まあ、アンディも若い盛りの男性だし、きれいごとばかりじゃ人間は勤まらない。
うらやましいなと思っていたら、そのうち彼は毛ジラミを移され、つぎに淋病にかかってしまった。
作家のセローもアフリカ紀行のどこかで、生まれて初めて淋病をもらったと書いていたから、これも自分の体験をそのまま書いたのだろう。
幸せなことにその後のアフリカで猛威をふるうことになるエイズは、彼がアフリカに赴任したころはまだ現れていなかった。

アンディが校長をしているとき、ニヤサランドが英国から独立してマラウイという国になる。
イスラエルに肩入れされた新しい政権は、共産主義のような独裁政治を始め、教育方針に口出しをするようになり、正義感の強いアンディと衝突して、彼はこの新興国を追放されてしまう。
彼はロンドンに移り、その後ふたたびアフリカにもどって、ガーナからナイジェリア、そしてウガンダへと転々として、もう行く先々で白人黒人のへだてなく、やってやってやりまくる。
おかげで2度目の淋病というアクシデントがあるものの、わたしは男がこんなにやりまくる本をはじめて読んだ。
ひょっとすると皮肉屋で、まじめ人間をコケにしたがるセローの誇張の可能性もあるけど、諸般の状況を鑑みると全部事実のようである。

アンディがウガンダでふたたび教師を始めるところまでしか読んでないから、今日の感想はここまで。
この先にまだ未読分が1/3ぐらい残っているけど、おもしろかったらまた続きを書くし、そうでなかったら書かない。
これまで読んだ分だけでも、“アフリカに来た男がアフリカ中の女性と寝る”という、この本を読むきっかけになった言葉の大意や、アフリカ紀行の参考になる部分は汲み取ったのだから、わたしは満足なのだ。
それにしても、品行方正な男だと思っていたセローに(若いころとはいえ)こんな淫奔な部分があったのはオドロキである。
しかしもしもわたしが20代か30代にアフリカに行って、セローと同じ境遇に置かれたら、わたしもきっと同じことをしただろう。
バレーボールでケニア選手の美しさに瞠目したわたしは、つくづくそう思う。

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