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2021年7月 7日 (水)

闇の奥の奥

ただいま「闇の奥の奥」という本を読んでいるトコ。
奥という文字が重なっているのは誤植じゃない。
これはコンラッドの小説「闇の奥」を論じて、アフリカ大陸における西洋の植民地主義のブラックな部分を批判しようという本だったから、「『闇の奥』の奥」なのである。

ポール・セローのアフリカ紀行をブログでなぞっているわたしは、そこに「闇の奥」がしょっちゅう引用されているので、参考のために読んでみようと考えた。
ところがいきなりとっかかると、文字が小さく活字は古臭い岩波文庫で、おまけに文学的でもあったので、ひじょうに読みにくい本だった。
これがアフリカ探検のドキュメントで、事実をそのまま書いただけの本だったら、もっと興味を持てて、すらすら読めただろうにと思う。
なんかお手軽に内容を知る方法はないかと、図書館を検索してみたら、“奥” が二段重ねのこの本が見つかった。
「闇の奥」を論じる本だというから、きっとあらすじも要約されているにちがいない。
それでこっちのほうを先に読むことにした。

読み始めてすぐにコッポラの「地獄の黙示録」が出てきた。
わたしはコッポラという監督がキライで、「黙示録」や「ゴッドファーザー」をほめる文章を見つけると、とたんに不愉快になる。
この本の冒頭に、米国が予防接種をした子どもたちの腕を、ベトコンが切り落としたと書かれた箇所があるのを読み、そんな事件は聞いたことがないと、ますます不愉快になった。
これだけでこの本はろくなもんではないと決めつけてしまったくらいだ。

しかしわたしは早まっていた。
この本の著者もベトコンが子供の腕を切り落とした事実はないと書いていて、けっして「黙示録」をいい映画だと断じてないのである。
そして冒頭の部分をクリアしてしまえば、こんなにおもしろい本はなかった。
書かれている内容は悲惨なものだから、おもしろいというのは不謹慎だけど、西洋の植民地主義がどんなものであったかということに関心を持てば、やはりこんなおもしろい本はないのである。

わたしはアメリカ大陸やアジアにおける植民地の歴史なら多少は知っていた。
しかしアフリカというと、せいぜい奴隷の供給基地であったということぐらいで、そこでどんなことが行われたかについてはほとんど無知だった。
大航海時代から近世にかけて、西洋が行った植民地からの搾取の方法は、アフリカ大陸でもまったく変わることがなく、スペインが南米でしたことと大差のない事例すらあったのだ。
ケシカランと左翼的怒りに燃えたまま、今日のところはこのへんまで。
ほんとは「闇の奥」について書きたかったんだけど、そっちはまだ手をつけてないもんで。

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