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2021年7月25日 (日)

秘めたる人生

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ポール・セローのアフリカ紀行である「ダーク・スター・サファリ」を読んでいると、タンザニアで列車に乗っているとき、たまたま同じ列車に乗っていた白人娘が、セローの本を読んでいるのに気がつくシーンがある。
どう?それおもしろいかいと尋ねると、おもしろいわよ、アフリカに来た男がアフリカ中の女性と寝る話なのと相手は答える。
奇遇だけど、それを書いたのは僕なんだというやりとりがあって・・・・

これを読んでわたしもこの本が読んでみたくなった。
本のタイトルは「わが秘めたる人生」といって、調べてみたら、わたしのよく行く図書館にも置いてあることがわかった。
で、またアフリカ紀行から脱線して、というかアフリカ紀行の番外編として、この本を読んで感じたことを書く。
これは純然たる小説だけど、アフリカで教師をしたことのあるセローの体験に基づいているらしいから、紀行のほうの参考になる部分も多いのではないか。

内容は主人公のヰタ・セクスアリスというべきもので、いろんな性体験をへて成長していく若者の人生が描かれる(らしい)。
まだ1/3ぐらい、アンディという主人公がアフリカに行くまえの、アメリカ時代しか読んでないけど、それでもひさしぶりにおもしろい小説に出会った気がする。
おもしろいというのは、無神論者のセローを反映したのか、物語の最初のほうに教会や牧師を揶揄する文章がたくさん出てくるからだ。
アンディはまじめな牧師をからかう一方で、呑兵衛の不良牧師と仲良くなり、いっしょにクルーザーで海に出たりする。
そして事故って船をつぶしてしまう。
この牧師とはやがて死に別れをすることになるけど、人生の教師としてはこういう人物のほうがふさわしい。

アンディは本ばかり読んでいるわりには、運動神経もそこそこ発達している若者で、よくもてる。
彼はベトナム戦争世代だけど、もうその時代からアメリカって性的に乱れていたのねと思いたくなるくらい、彼も仲間たちもお気楽にセックスをしてしまう。
いや、これはわたしが奥手すぎたのかもしれない。
わたしがアンディと同じ歳のころ、わたしは海上自衛官として広島の呉にいて、同僚のカネコという男と休日のたんびに呉市内を遊びまわった。
わたし自身はひっこみ思案の田舎者でそんな勇気はなかったのに、この友人が都会ずれしたひょうきんな男で、街のなかで反対側の通りを歩いている女の子に、おーいと声をかける。
知り合いかいと訊くと、ぜんぜん知らない相手だという。
こんな調子でも10人に声をかければ、3人か4人ぐらいはデイトに誘えたから、カネコのおかげでわたしの青春もそれなり充実したものだった。
もっとも、セックスまで進んだ相手はほとんどいなかったけど。

小説にもどるけど、アンディは近所の娘とセックスし、ずっと年上の金持ち女性には可愛がられる。
そのうち娘は妊娠して堕すのどうのという騒ぎになり、金持ち女性との付き合いもうっとうしくなってきて、えいっとなにもかも放り出してアフリカに渡ってしまうのだ。
ほんとうはこのあたりに徴兵拒否という事件がはさまり、軍隊に行く代わりに平和部隊に派遣という事実があるはずだけど、それはほとんど語られない。
わたしに興味があったのは、主人公がアフリカでアフリカ中の女性と寝るという部分だから、さあ、いよいよおもしろくなりそうというところで、この先はまだ読んでないからお預けだ。
それでも期待がふくらむのは、きれいごとばかりが人生じゃない、これはそういう類の本だと思うからだ。

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