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2021年10月28日 (木)

リビングストンの2

わたしのブログを継続して読んでないと、なんでリビングストンが出てくるのってなりそう。
これはわたしのブログの「旅から旅へ」もしくは「深読みの読書」のカテゴリーに入るものなので、そっちを読み返してもらえる?

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アフリカでリビングストンが行方不明になり、英国人のスタンレーが捜索のためにアフリカに渡ったのは1871年のことだった。
これは日本でいうと明治4年のことだけど、まだ鹿児島あたりでは不満分子がゴチャゴチャいっていたから、明治維新もまだ磐石とはいえなかったころである。
そんなことは、かりに知らなくても調べればわかることだ。
ここではややへそ曲がり的方向からリビングストンの功績をながめてみよう。

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彼はその生涯のうちに何度かアフリカを探検しているけど、行方不明になったのは1865年の探検のときである。
このときはザンベジ川からシレ川をさかのぼった。
わたしのブログでは、ポール・セローがシレ川を丸木舟で下ろうとして待機中だから、リビングストンは同じコースを逆に進んだことになる。
そしてマラウイ湖からタンガニーカ湖に向かったあたりで消息を絶った。

捜索に出たスタンレーが彼を発見して、リビングストン博士ですかと問いかけた場面は、有名だから知っている人は多いだろうけど、それが具体的にどこだったのかを知ってる人は多くないと思う。
わたしも知らなかった。
それはタンガニーカ湖のほとりのウジジ(現在のキゴマ)のあたりだそうだ。
発見されたあと、リビングストンはしばらくスタンレーと行動を共にしたものの、けっきょく生きて文明社会にもどることはなかった。
これ以前に彼は、アフリカまで訪ねてきた妻を病気で失っているから、おそらく夫婦そろってアフリカに葬られるほうを望んだのではないか(遺体は英国のウエストミンスター寺院まで運ばれたらしいけど、余計なことをしたものだ)。

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ところで暗黒大陸のはずのアフリカだけど、リビングストンの伝記を読んでいると、あちこちにアラブ人や、白人のポルトガル人が出てくる。
ざっくばらんにそのころのザンベジ川周辺を俯瞰しておくと、大きな国家はなかったものの、アフリカ人たちは小部族単位で戦争ばかりしており、アラブ人はずっと以前から奴隷貿易のために進出していたし、ポルトガル人もすでにザンベジ川の流域に植民地を建てていた。
このあたりは西洋人にとって、かならずしも人跡未踏の土地ではなかったことになる。
ただし危険はいっぱいあった。
当時のアフリカにはまだライオンがたくさんいたから、リビングストンも腕にひっかかれた傷あとが残っていたという。

小部族単位の戦争も、へたにまきこまれると危険である。
そういう戦争が多いのには理由がある。
たとえばアラブ人やポルトガル人が部落の酋長のところにやってきて、ひとりにつき千円出すから30人ばかり奴隷を集めてくれないかと依頼する。
酋長はお金が欲しいから、となりの部族にケンカを売って、捕虜を仕入れてきて、それを奴隷として売っぱらう。
たまに間違えて戦争に負けて、酋長も捕虜になり、奴隷として売っぱらわれることがあったかもしれない。
どっちにしたってあたま数が30人そろえばいいのだから、奴隷の仕入れ業者は困らない。

これは想像力の発達したわたしの脳みそがでっち上げたエピソードだけど、似たようなことがたくさんあって、それで部族単位の戦争が絶えなかったのではないか。
リビングストンは奴隷の解放に尽力したともいわれている。
しかし彼は探検中に奴隷たちが1500人も虐殺される現場を目撃したけれど、それを止めるだけの力はなかった。
崇高な精神がいつも貪欲な資本主義に勝つとはかぎらないのだ。

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リビングストンは宣教師であると同時に、暗黒大陸とよばれたころのアフリカで、英国のために交易路を求めて歩きまわった探検家だった。
交易路を求めてという点で、けっきょくは列強の植民地政策の先兵、あるいは奴隷売買業者の便を計ったにすぎなかったと、ポール・セローなどは厳しい。
こういうふうに伝わっている俗説がひっくり返されることはよくある。
ネット上には、われこそは〇〇の伝説・神話をひっくり返してやろうと意気込む素人作家、アマチュア歴史家がたくさんいて、まあ、その大半はロクなもんじゃないけど、ポール・セローのような国際的作家が書いていることなら、信頼してもいいんじゃないか。
リビングストンは布教活動もほとんど失敗していて、彼のためにキリスト教に改宗したアフリカ人はひとりしかおらず、それもあとで棄教した(とセローは書いている)。

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