無法松の一生
BSで「無法松の一生」が放映されたので録画しておいた。
あとで観てみたら主演が三船敏郎ではなく、坂東妻三郎で、まだわたしが生まれるまえのモノクロ映画だった。
わたしが知っていた三船版は、同じ監督によるリメイク作品だというから、色つきになった以外は、ブロットも構成もほとんど同じである。
わたしは子供のころ三船版を町の映画館で観て、雪のなかで死んでゆく無法の松っつあんにいたく感動したおぼえがあるし、その三船版でさえ最近はとんと観る機会がなかったから、ついなつかしい思いで観た。
坂妻版は戦争中の作品で、車屋ごときが軍人の妻に恋をするのはケシカランと、いろいろ制約やカットされた部分があったらしい。
なかでも坂妻版で、松五郎が思いをよせる未亡人(軍人の妻)に気持ちを打ち明けようとして、身のほどを知り、うなだれて去るという映画の大きな山場がカットされたのは痛かった。
そういうわけで映画としては、やっぱり三船版のほうがいいけど、最後のとってつけたような場面がわざとらしくて、新旧ともそこだけが欠点だな。
松五郎の知り合いが軍人の未亡人に、あいつはこんなお金をあなたのために残していましたよというと、それを知った未亡人がおよよと泣き崩れるんだけど、ここはもうすこし暗示のような手法は使えなかっただろうか。
そこさえ考えてくれれば日本映画の屈指の名作だと思うのに残念だ。
軍人の奥さんを演じたのは、モノクロ版が園井恵子、カラー版が高峰秀子で、どっちも古風な日本女性を演じて遜色はない。
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