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2022年1月 2日 (日)

アフリカ/2人のマイク

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いや、ひどいもんだね。
前項でわたしならサッカーよりラグビーを見に行くなんて呑気なことを書いたけど、そんなことをしていたら、いまごろわたしは見ぐるみはがされ、ペニスを切断され、睾丸を抜かれて穴埋めにでもされていたんじゃないか。
調べてみたら、現在のヨハネスブルグの犯罪率は想像を絶するほどで、それはもはや伝説になっているらしい。
市内で強盗に遭う確率は150%だという。
これは100%強盗に襲われ、その帰りにもまた襲われるから150%なんだそうだ。
これではポール・セローが旅をしたころより悪くなっているかもしれないし、白人に支配されていたころのほうがよかったと、なげく人が多いのもうなづける。

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前項ではヨハネスブルグの陽の当たる場所を重点的に見てきたけど、この項では影の部分を見ていこうと、“ヨハネスブルグ”と“スラム”というキーワードで画像を検索してみたら、いやもう、出てくるわ、出てくるわ。
ここにあるスラムで有名なのはソウェト(Soweto)地区といって、それを見る観光ツアーまであるという。
わかるような気がする。
これだけ貧富の差が激しく、まったく明日の希望のない生活を強いられたら、誰だってヤケッパチになり、殺すなら殺せ、オレは強盗をするぞーという気になるんじゃないかね。
ということで、この記事の前半はスラム特集だ。

行ったことのないわたしが案内するより、ここではまだ最近スラムをルポしたネット記事をふたつ紹介しておこう。
ヨハネスブルグ探訪ルポその1
ヨハネスブルグ探訪ルポその2

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ポールセローはなんとか無事でナディン・ゴーディマと会ったあと、友人の紹介で化石遺跡の案内人マイク・カーキニスと知り合った。
化石案内人というのは、人類の起源にまつわる発見が多いアフリカで、それについていろいろ説明するものらしい。
原生人類の祖先はアフリカで誕生したというのが現代の定説で、「2001年宇宙の旅」でモノリスが降り立ったのはアフリカのどこかということになっとるのだ。
カーキニス君が映画の説明までしたかどうかは知らないけド。

カーキニス君の友人に獣医をしているドイツ人のシビラという女性がいて、彼女は身長が185センチもあり、自分でヘリコプターを操縦する女傑といっていい人だった。
ゾウに麻酔をかけたら、それがあまり効かず、踏みつぶされて重症を負い、1年も入院していたそうだけど、セローと知り合ったときには、よっぽどじろじろと眺めないと足の傷も目立たず、ロングのヘアが風になびいて、思わず見とれるくらいの美人だったという。
そういわれると顔が見たくなるのは(これを読んでいるあなたもそうだろう)人情だ。
で、ネットで該当する女性を探してみた。
セローの旅から20年も経っているし、たんなる獣医兼ガイドなので、ちょっとむずかしいかなと思ったけど、“南アフリカ” “獣医” “シビラ”という言葉で探してみたら、下記のサイトがヒットした(写真の上でクリック)。

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これは獣医のシビラ・クアントさんを紹介するサイトで、経歴や体の特徴などをみるとセローが会った獣医さんに間違いないようだ。
美人かどうかは見る人による。

彼女のサイトの末尾にいいことが書いてあり、むずかしい英語ではないから、興味のある人は自分で訳してみて。
We are not african because we are born in Africa
but because Africa was born in us.

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セローは彼女の操縦するヘリコプターで、上空からヨハネスブルグを見てまわり、裕福な白人たちが郊外に逃げ出し、残されたスラムに貧しいアフリカ人たちが住み着いている景色を見て、いいようのない感情をもつ。
わたしは空からスラムというものを見たことがないからわからないけど、延々と連なるほったて小屋やうごめく人間たちは、見ようによっては壮絶ともいえる景色かもしれない。
住人たちのほとんどが、かってはアフリカの原野で、素朴で原始的で、それでも先祖伝来の平和な生活をしていた人たちだということをセローは知っていた。
それが吸い寄せられるように大都会に集まる。
アフリカでは街が大きくなるとかならず悲惨な場所になるということを、セローはあちこちで書いていて、そんな自説の正しさを、ヘリコプターからはっきり確認したに違いない。

つぎにセローはカーキニス君の紹介で、ウィットウォーターズランド大学・古人類学研究チームのリ・バーガー教授を知った。
こちらの教授さんは名前も勤務する大学名もわかっているから、シビルさんより探すのは楽そうだったけど、その学説にアダムとイブまで出てきて、どうも納得しにくいものだったらしく、セローの文章には揶揄する調子がある。
それでわたしも彼のことは探さないことにした。

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セローがヨハネスブルグで知り合ったマイクはもうひとりいる。
こちらはマラマラ動物保護区(すぐ上の3枚の写真)のオーナーであるマイク・ラトレイで、もともとはそのあたりのの地主だった人である。

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マラマラ保護区は有名なクルーガー国立公園に隣接しており、南アフリカでは野生動物がたくさん見られる貴重な地域で、ラトレイさんはもともとここで欧米からやってくるハンターたちに狩猟をさせる仕事をしていた。
そのうち動物を撃たせるより、見物させるほうが長期的に商売になるというもっともなことに気づき、それ以来動物の保護者をもって任ずることになった。
どうしても狩猟がしたいという客には、できるだけ群れのなかの弱そうで、のろまな動物だけを撃たせるのだそうだ。
自然界でそういう動物はどうせ長生きできないし、強くかしこいものだけが残って、遺伝子プールが汚れる可能性も低くなる、というのがラトレイさんの考えだそうだ。
環境保護派のセローと考えが一致したことはいうまでもない。

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いわずもがな、最近では狩猟は禁止されていることが多く、反面ゾウやライオンを見たいという観光客は増えているので、マラマラ保護区のなかには豪華なロッジもある。
セローの考えとは一致しないけど、ワインつきの豪華な食事を味わいながら、近くでライオンがカモシカをむさぼり食うのを眺められるわけだ。
現場では観光の車が無線で連絡を取り合っていて、どこそこでライオンがイボイノシシを食ってるぞ、チーターがインパラを追っかているぞなんて情報はすぐに全車に伝わり、生々しい食事風景を見逃すことはないという。
こういうスタイルはヘタな動物園よりおもしろいかもしれないし、行け行けどんどんで、観光客が増えるのは大歓迎だ。
日本人はシルクロードが好きで、現地の人からどうしてかと不思議がられるらしいけど、欧米人はアフリカで野生動物を見るのが好きらしい。

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後半はマラマラ保護区の動物たち。
ポール・セローのアフリカ紀行で、人間以外の動物を紹介するのはこれが最後になるので、思い切り紹介してしまう。
モノクロ写真は「マラマラ保護区の歴史」というサイトから。

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