砂ぼこり
昼間、買い物に行こうとして、見ると家々の向こうに茶色の砂ぼこりが。
そうか、もう春はすぐそこだなと思う。
わたしの郷里は群馬県で、赤城山から吹きおろすカラっ風が名物のところだった。
むかしの家の近所は田畑が多く、春先の風の強い日は砂ぼこりが黄砂のように舞い上がった。
まずいことにわたしの家は中学校の校庭の風下にあり、吹き込む砂ぼこりもハンパじゃなかった。
親父が結核で入院していたから、勤めに出ていた母親が疲れて帰宅すると、家のなかは砂まみれになっていて、部屋の掃除は毎日の余分な日課のようだった。
ああ、幼かった頼りない息子のわたし。
死んだ母親ともういちど会うことはできないものか。
謝りたいことは山ほどある。
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