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2022年5月27日 (金)

NHKの不思議

この文章はロシアとウクライナのどっちが正義かをうんぬんするものではなく、NHKに苦情をいうものである。
アンタがウクライナを支持するなら、それはそれでいっこうかまわない。
しかし公平・客観性という観点から、先日放映された「映像の世紀/バタフライエフェクト」はあまりにひどすぎると思うので、公共放送がこんなことでいいのかと、世間に尋ねてみたいのだ。

この番組は、まずのっけからスターリンとプーチンを並べて始まる。
NHKにはわたしなんかよりずっと頭のいい人が多いだろうに、スターリン時代のロシアとプーチン時代のロシアはちがうと、何度いってもわからないのだ。
この2人を同列に並べるなら、日本は岸田クンと東條英機を並べなくちゃいけないのか。
太平洋戦争で日本は集団指導体制をとっていたから、東條英機ひとりに責任を押しつけるのは申し訳ないけど、時代も状況もまったく異なり、政治のやり方もまったくちがう2人を同列に扱えるのか。

おそらくこの機会に日本を軍事大国にしようと、政権与党と足並みを揃えているんだろうけど、それならもうすこし正攻法でやってくれないか。
デタラメな報道をして青少年をだまくらかすのでは、いたずらにロシアへの警戒心を植えつけるだけで、未来をになう若者たちへの弊害は大きい。

わたしはスターリン時代のロシアについて、いくらかは、そうさな、これを読んでいるアンタ程度には知っているつもりだ。
スターリン時代のロシアには恐怖政治が敷かれており、監視と盗聴、密告が奨励されていて、ちょうどいまの北朝鮮のような国だったと思えばよい。
このブログにも書いた「Чекист(チェキスト)」という映画のように、一般市民にまでなさけ無用の粛清の嵐が吹き荒れていた。
ドアをノックされたら取るものもとりあえず窓から逃げろといわれていたくらいで、ロシア国民はおちおち安眠することもできなかったのだ。

番組ではこれでもかこれでもかと、スターリン時代の恐怖政治を強調し、あるゆるデータを並べて、ロシア人は残忍だということを印象づけようとしていたけど、それでは日本人はどうなのだ。
日本人が残忍だと思っているのは、中国や韓国だけではなく、欧米人のなかにもけっして少なくないということを自覚したほうがよい。

わたしはすこしまえに「戦時下の大統領ゼレンスキー」というドキュメンタリーを観た。
これがアメリカや英国の制作ならハナっから無視だけど、ドイツのテレビ局が制作したというから、もしかすると公平なものかと思って観てみたのである。
ひとことでいうと、なかなか優れた番組だった。
たとえプロパガンダだとしても、やはり優れていることには変わりがなかった。
この番組を観て、わたしのゼレンスキー観に変化があったくらいなのだ。
彼は無能な大統領ではなく、理想主義者のアマチュア大統領なのだろう。
しかし政治家としての力量ではとうていプーチンにかなわない。

KGBにいたことがやたら強調されるように、プーチンは経験ゆたかで、剛腕をそなえたクールな策略家だ。
彼は先を読んで謀略を仕掛けたり、他人をあざむくことが上手なのである。
しかしこれは政治家として、むしろ有能だということになり、ゼレンスキーさんがとうてい太刀打ちできる相手ではない。
謀略ならどこの国だってやっていることだし、歴史的にいちばん有名なのは英国だ。
日本が首尾よく軍事大国化に成功すれば、岸田クンだってなかなかの謀略家といえる。

だからここは相手の立場で考えてみよう。
プーチンになってから、恐怖政治はなくなった。
いや、なくなったと断言はしない。
プーチンの政敵にとってはまだ恐怖政治は続いているかもしれないけど、すくなくとも一般市民が安心して寝られないということはなくなった。
がらんどうのデパートの棚を見ることもなくなったし、外国人と話しただけでスパイ扱いされることもなくなったし、庶民のあいだで日本車がブームだ。
YouTubeなどを観ればわかるように、日本にどさどさとロシア娘たちがやってきて、ロシアを非難する者、擁護する者がいるくらい、発言も自由で活発だ。
いったいNHKはどうして現在のロシアをスターリン時代と同一視できるのだろう。

「映像の世紀/バタフライエフェクト」はスターリンの娘スベトラーナの
悪の手段で善を打ち負かそうとした者たちは、いったい何を手にしたのだろうか
という言葉で終わっているけど、これっていったいいつごろの発言なのか。
これが彼女が米国に亡命したあと、まだ冷戦のさなかの発言なら、彼女はロシアを貶めるために、米国に最大限利用されただろうから納得できないこともない。
しかしプーチンの新生ロシアを見たあとなら、彼女は同じ発言をしただろうか。
もしもいま彼女が生きていれば、あのロシアがこんな開かれた国になったのかと驚愕したのではないか。
しかも本当のはどっちなのかということも考えたかもしれない。

プロパガンダというのはこういうものである。
自分の都合のいい発言だけを、自分の都合のいいように並べ、自分の都合のいい主張に仕立て上げる。
カルト宗教がいつもやっている手法だ。
わたしは未来をになう若者たちにあえて警告する。
あのNHKが、という常識も疑ってみなければいけない場合があるのだ。

最後にひとこと。
わたしにはまだわからないことがあるんだよね。
プロパガンダだとしたらあまりに幼稚なプロパガンダなので、ひょっとしたら日本の軍事大国化以外に、わたしのぜんぜん知らないべつのおもわくが隠されているんじゃないかって。
アンタ、どう思う? なんか思い当たるか。

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