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2022年7月29日 (金)

ひとつの見立て

国際政治というのは、だまっていれば相手の言い分を認めたことになってしまう。
だから日本は、その目があるかどうかは別にして、80年近くも北方四島を返せ返せといい続けているし、中国は台湾はウチの領土だと言い続け、ときどきは飛行機を飛ばしたり、軍艦をちょろちょろさせたりしている。
とにかくなにかしら示威行為をしておくことが、こっちの主張を忘れさせないために必要なのだ。
韓国が慰安婦や強制労働をいい続けるのは、これはよそから刺激されて途中から言い出したことだから無視していいけど、極東アジアの住人がしつこいのは共通の遺伝子があるからではないかと、欧米人は思っているのではないか。

わたしは中国は台湾に武力侵攻などしないだろうという立場だった。
とかく中国ギライの反共主義者たちは、台湾は中国ギライで統一されていると思っているけど、台湾にはもともと国民党という中国寄りの政党がある。
いまはウクライナ戦争のおかげで、共産主義はコワイという考えが主流になっているけど、平和なら時代なら、その時々の状況しだいでどっちにつくか決めようという浮動層まで含めれば、国民党の勢力はけっしてあなどれなかった。
落ち目のアメリカより中国にくっついたほうが得じゃんと思えば、かんたんに民意がひっくり返るのが台湾という国なのだ。
だから中国がひたすら平和で安定的な繁栄さえこころざしていれば、熟した柿のように台湾はひとりでに中国側に落ちるだろう。
無理に戦争なんかする必要はないので、冷静な中国はそういう戦略をとるだろうと思っていた。

ところがウクライナ戦争を見ていて、ひょっとすると中国はこの方針を変えるかも知れないと思うようになった。
理由はウクライナにおけるアメリカのていたらくだ。
しっかりと国際状況を見極めもせず、自分の腕っぷしだけを頼りにロシアへの制裁に踏み切って、案の定中国やインドや途上国はどこも制裁に参加せず、逆に制裁に参加したヨーロッパが、プーチンのエネルギー制裁にあってネを上げてしまう始末だ。
ウクライナからはもっと武器をくれ、もっとと泣きつかれ、それが際限なくエスカレートして、ついには戦闘機まで供与しようかと考える始末。
そのうち核兵器まで供与しようかといいださなければいいけど。

バイデンさんはロシア産エネルギーの代替えをしてくれないかと、このあいだまで殺人者だとみなしていたサウジアラビアのムハンマド王子にまでお願いに行っていた。
パレスチナ問題や温暖化阻止の公約も、みんなあさっての方向に行っちゃって、もうやることなすことムチャクチャだ。
ムハンマド君はそんなバイデンさんを見て、あのアメリカがオレんところに頭を下げてきたと、腹のなかでせせら笑っているに違いない。
アメリカの国格は下がる一方だ。

こんなアメリカのていたらくを中国はじっと観察している。
アメリカなんて腕力だけが頼りで脳みそのない暴力団みたいなものだ。
もうすこし様子をみて、アメリカの斜陽が限度を越えたら、いっきょに台湾に軍事侵攻してもどうってことはないだろうと考えてもおかしくない。
いや、待て。
日本がいるな。
自衛隊を相手にしたらこっちも被害が無視できないから、やっぱり平和で安定的な国家作りという長期戦略で行くほうが無難か。
と、中国が武力侵攻を思い止まってくれればいいんだけどね。
アメリカのおかげで、わたしも判断に迷ってしまうよ。

岸田クンがアメリカに追従したのは失敗だった。
ロシアと中国はおなじ共産党上がりといっても、腹のなかでは近親憎悪みたいなところがあって、けっして一枚岩ではない。
プーチンは日本びいきなところがあるから、かりに日本と中国が戦争でも始めれば、ロシアを味方につけて中国をけん制することもできたはず。
日本が落ち目のアメリカ・グループに加わったおかげで、ロシア、中国の協力関係をわざわざ強固なものにし、双方を敵にまわしたというのは大失策だ。

しかし相手のことを思いやるというワタシ(酔いどれ李白)の言い分に従うなら、いまの日本にアメリカに加担しないという選択肢があっただろうかという人がいるかもしれない。
あったのだ。
あとづけでこんなことをいっても仕方ないけど、もしもウクライナ戦争が始まるまえに、岸田クンがバイデンさんのところへ行って、まあまあ、ここはわたしにまかせて下さいといったとする。
その足でウクライナのゼレンスキーさんのところへ出向き、経済援助はいくらでもしてあげますから、いまNATO加盟だけは思いとどまったほうがいいですと忠告する。
ゼレンスキーさんがぶちぶちいったら、あんた、わたしらの協力なしにロシアに勝てると思ってんのと一喝する。
さらにその足でロシアに寄り、米国が虎視眈々と出番を狙ってますから、あまりウクライナに固執するのはよくありませんよとプーチンを説得する。
プーチンだって好んで戦争をしたいわけじゃないから、NATO加盟さえなければということで納得する。
バイデンさんは国内の軍事産業からうるさくいわれるかも知れないけど、せっかく仲をとりもってくれた日本を怒らせるわけにもいかないから、こちらもなんとか納得する。
これでウクライナ戦争を阻止できれば、さすがは安倍もと首相の後継者だということで、どきどきしながら様子を見ていたドイツやフランスからも感謝され、かりに岸田クンが狙撃されて死ぬようなことがあれば、世界中から弔電が殺到するだろう。
え、どうだ。甘いかな。わたしの見立ては。

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