重大報告
急きょまた旅に出ることにした。
なんで急きょなのか。
じつはこ夏の始めのある日、わたしは自転車で近所をふらふらしていたと思いたまえ。
近所といっても自転車の行動範囲は広いから、半径10キロ圏といったらいいか。
日ごろ国際情勢ばかり論じていると、“近所” の範囲もこのくらい大きくなるのだ。
そんなことはどうでもエエ。
自転車でふらついている最中に、とある藪の中で袋小路にはまりこんだ。
こりゃいかんと、自転車にまたがったまま方向転換をしようとして、片足を地面につけ、それを軸にして自転車を一回転させようとした。
ところが軸足にしようとした側の地面が段差になっていて、ほんの10センチほど低くなっていた。
若いころならそれでも軸足だけで体をささえられたと思う。
それなのに、ああ、それなのに、足がへなへなとなって、わたしはぶざまにその場に転がってしまった。
だれも見ていないことを確認して、素知らぬ顔で立ち上がったけど、わたしの自尊心はおおいに傷ついた。
もはや一刻の猶予もない。
わたしの手元には人生最後の海外旅行にそなえて、わずかばかりの貯えがあったのだ。
しかし現在はコロナのせいで、行こうと目標にしていた国には入れそうもない。
このままでは虎の子をかかえたまま、足が弱ってどこにも行けなくなる。
自分の足で歩けない旅なんて、わたしにはまったく意味をなさないのだ。
えい、ヤケッパチだ、国内旅行でもなんでもいい、金は元気なうちに使っちまえ!
というわけで、明日からまたお出かけです。
急きょというのはこういう意味なのです。
大人になりきれない大人の悲しみをたれが知る。
子供のころ、いつまでも大人になりたくないと、女の子のようなことを考えたことがある。
いじけっ子のわたしは、社会に放たれるのが恐ろしく、両親の庇護のもとに、いつまでもぬくぬくと産衣につつまれていたいと念願していたのだ。
だらしない話だけど、そういうわけでじいさんになったいまでも、わたしは大人たちの社会に溶け込むのがニガ手である。
どこへ行くかだって?
国内旅行といえばわたしには沖縄しかない。
あの自然がいっぱいの西表島しかない。
“旅に病んで夢は枯野をかけめぐる”とうたった芭蕉のように、死ぬまで旅をしていたいというのがわたしの願いだ。
しばらくブログの更新もおざなりかもね。
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