芸術家の国
昨夜はBSの「天才ピアニスト、ブーニン/9年の空白を越えて」という番組を観ていた。
このピアニストを知ったのは、彼が19歳でショパン・コンクールに優勝して、いちやくマスコミの寵児になった1985年ごろだから、あ、もう37年まえのことか。
ロシアに乗り込んで聴衆の度肝をぬいた、グレン・グールドの記録映画を観たのもこのころだったかもしれない。
そのころわたしは何をしていたかというと、ロックやジャズにあきたらなくなって、クラシックを含めたあらゆる音楽を聴きまくっていた。
なんでもそうだけと、◯◯賞なんてものは、むかしのほうが権威があったような気がするので、わたしは本物を聴くことができた幸運な世代なのだろう。
音楽の素晴らしさを文章で表現するのは、わたしにはむずかしいけど、わたしがロシア芸術のファンであることは、このブログを読んでいる人ならわかってくれるはず。
わたしはルーブルに行くよりトレチャコフ美術館に行きたかった。
その夢が現実になったときの感動をいまでも忘れはしない。
わたしがウクライナ戦争でロシアに理解を示すことや、戦争をやめてまたロシアとウクライナが仲の良い国になつてほしいと念願するのは、これほど素晴らしい芸術を生んだ国を、がさつな精神の国にひっかきまわされたくないからだ。
米国にもジャズのように、わたしの気をひく芸術はあることはある。
しかし現在のジャズにあまり関心が持てないように、移り変わりが早くて、どうしても一時代の流行でしかないものを感じてしまう。
それに比べるとロシアの芸術はほんとうに、いつでもこころをなごませてくれる。
番組のなかにブーニンがおしんこを食べるシーンがあった。
彼が器用に箸を使って、奥さんにあなたも食べるかと聞くシーンがあって、そういえば彼の奥さんは日本人だったよなと思い出した。
その後病気をしたり、足を手術したりと、このたぐいまれな音楽家にも苦難の時代があったようだけど、番組はしっとり落ち着いた好感のもてるものだった。
それなのに、ああそれなのに、番組のなかで、いまのNHKらしく、ブーニンを利用してロシアを貶めるプロパガンダが始まった。
たしかにブーニンは束縛を逃れて、自由主義国に亡命したけど、それはソ連の時代の話である。
ほかにもロシア政府によって迫害されている音楽家のマスコミ記事まで持ち出していたけど、これもよく見るとペレストロイカが始まって間もないころのものだった。
現在のロシアとソ連は違うのだと何度いってもわからない。
いまでもロシアで音楽家が迫害されている事実があるだろうか。
こういうのをわたしはデタラメだというんだけど、ありとあらゆる機会と番組を動員して、ロシア貶めようとするNHKの執拗さはどうだろう。
何度でも何度でもいうけど、ソ連と現在のロシアとでは、べつの国というくらい違うのだ。
芸術は時代を超えて人々のこころに訴えるものなので、ああ、NHKよ、いま現在の日本の都合で、これ以上人々をたぶらかすのはやめてくれ。
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