「プーチン/知られざるガス戦略」という番組を観てまた怒り心頭。
相手には相手の立場があるのに、日本の公共放送はいったいどこまで、わたしの尊敬するプーチン大統領を貶めれば気がすむのか。
おととい録画したこの番組は、プーチンの20年におよぶガス戦略に迫るというサブタイトルで、天然ガスを戦略兵器として利用するプーチンを非難するものだった。
しかし、すくなくとも出てくる映像そのものはデタラメじゃない。
ただそれが解釈やナレーションになると、NHK流の誹謗中傷になってしまうのである。
相手の立場でものを考えれば、同じ映像からまったく正反対の見方もできるのに。
一例をあげよう。
ソ連が崩壊して混乱のきわみにあったとき大統領職を継いだプーチンは、台頭しつつあったオリガルヒ(新興財閥)を招集して、天然ガスの扱いを強制的に国営のガス会社(ガスプロム)に一本化した。
もしも彼がそうしなかったら、ロシアはいまのウクライナと同じ、オリガルヒに食いものにされる破綻国家のままか、あるいは米国のような、ひとにぎりの金持ちが富の大半をにぎる格差社会になっていただろう。
金の成る木を国家が一元的に管理することのどこが悪いのか。
プーチンはオリガルヒの危険性をよく知っており、これはKGBあがりで剛腕といわれた彼だからこそ出来たことである。
しかし日本の独占企業であるNHKは、まるでプーチンが私利私欲のためにガスの利権を独占したかのようにいうのである。
ウクライナがロシアと親密だったころ、ロシアはウクライナを含めた、かってのソ連圏の国々に、安くガスを供給していた。
ところがオレンジ革命が起こって、ウクライナがロシアに離反の動きをみせると、ロシアはガスの供給を調整して、ウクライナを締め上げる。
味方だと思っていた国が敵対関係になれば、優遇策は取り消されるのが当たり前じゃないか。
値段をほかと同じにするだけなら、日本が韓国からホワイト国待遇を取り上げたのと変わらない。
ロシアとウクライナの関係がゴタゴタすると、ウクライナ経由のガスパイプしかなかったヨーロッパのエネルギー調達にも支障が出る。
ドイツのシュレーダー首相は、天然ガスの安定供給のためにバルト海を使って、ロシアとドイツを直結するノルドストリーム(パイプライン)の建設に同意した。
あとを継いだメルケル首相も同じ路線を踏襲した。
安くて安定供給が見込めるなら、一国の首相として当然のことだ。
まだこのときウクライナ戦争が始まるなんてことはだれも予想してなかったのである。
総じてこの番組は結果論が多すぎる。
戦争が起こらなければ、ロシアとドイツのガスの取引は、ロシアにとって外貨収入のよりどころであり、ドイツにとってはエネルギーの安定供給という、双方にメリットがあることだった。
シュレーダーさんもメルケルさんも、国家間が信頼で(ガスパイプで)結ばれていれば、戦争は起こらないと考えていた。
ガスの輸送が止まればロシアにとっても大損なのだから、ノルドストリームはむしろ平和に貢献するだろう。
ドイツ首相がこう考えたとして、いったいどこが間違っているのか。
日本だってせっせとサハリン1、2につぎ込んでいたじゃないか。
アメリカは欧州(そして日本)とロシアが親密になるのを苦々しい顔で見つめていた。
だいたいプーチンが天然ガスを戦略兵器として使うのがケシカランというなら、アメリカには戦略はなかったのだろうか。
もちろんあったのだ。
アメリカの戦略というのは、つねに自分がNo.1にいて他国にさしずをすることだから、あちらでNATOに所属する一方で、こちらではAPEC(アジア太平洋会議)に鼻をつっこむ。
世界警察に専念するというなら、同盟国には頼もしがられるけど、ほんとうのところは自分の国の価値観を他国に押しつけ、自国の兵器や石油を売りつけるということだった。
No.1を維持するためには、同盟国にも容赦ない米国の姿勢は、プラザ合意が証明している。
ウクライナ戦争はロシアの戦略と米国の戦略のガチンコ勝負だ。
しかしプーチンはロシアの大統領として、なにひとつ悪いことはしてないし、シュレーダー、メルケルと続くドイツの首相も悪くはない。
どうせワイロをもらったんだろうというけちなドイツ国民もいるようだけど、ガスパイプは平和を維持するという、もっと高尚な理念から生まれている。
ノルドストリームを破壊したのは、こうやって見ると米国か英国以外にはあり得ないのに、番組は犯人はわからないで結ばれていた。
相手の立場を押しつけるわたしのことだから、日本の立場ではアメリカに追従しなければならなかったこともわかるけど、姑息な手段を使うのはやめてくれ。
NHKは優秀な人間の集まりであるはずなのに、わたし程度の人間にケチをつけられる報道をして恥ずかしくないのか。
そうか、あまりレベルの高いプロパガンダをやると、肝心の日本国民が理解できないものな。
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