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2023年1月 2日 (月)

しつこいプロパガンダ

元日はCool Japanという番組を観ていた。
これは日本にいる外国人を集めて、日本のいいとこ、悪いとこを議論してもらう番組で、わたしは外国人が日本をどう見ているのか興味があるから、この番組の熱心なファンである。
昨日のそれはスペシャル版で、去年の日本国内のニュースの中から、トップテンを外国人に決めてもらおうというもの。
こういうのは毎年の恒例になっているから、それはそれでいいんだけど、ところがこの番組もやはり最後はウクライナのことになってしまった。
日本人がウクライナ難民に親切にしていることが、外国人の選んだ今年のトップニュースだそうだ。

もういいかげんにしてくれよといいたくなるけど、NHK-BSは正月番組に「映像の世紀」や「混迷の世紀」、そのほか無理やりウクライナをくっつけたようなプロパガンダ番組をずらずらと並べた。
「混迷の世紀」では、はじめにノーベル文学賞を受賞した作家のスベトラーナ・アレクシェービッチというおばさんが出てきた。
彼女の発言を聞くと、もともと文学賞はノーベル賞のなかでもあまり権威のあるものではないし、おばさんは西側寄りの隠謀によってこの賞を受賞したのだと思わざるを得ない。

彼女はこのような犯罪がおこることを想像してなかったという。
何百万人の犠牲者をだして打ち立てた秩序なのにとか、ロシア人のなかに帝国を志向する傾向があることは知っていましたともいう。
まっとうな大国がやったことを“犯罪”とはいいすぎだし、すべてロシア側の立場を無視した発言ばかりだ。
侵略を悪いと決めつけるのは、だまってこちらのいいなりになっていろということで、得をするのはロシア包囲網をしこうというアメリカだけである。

スベトラーナさんにインタビューをしていたのはNHK解説委員長の河野憲治サンだけど、彼は、それはこういうことなんじゃないですかと、最初から自分の主張にそわせるような聞き方をする。
これではインタビュアーとしては失格である。

番組ではさらに、その肩書きだけで視聴者を恐れ入らせようと、国際政治学者イアン・ブレマー、もとフランス外相のユベール・ヴェドリーヌ、ピュリッツァー賞受賞者のダニエル・ヤーギン、経済学者ジャック・アタリ、国連事務次長の中満泉さんらをくり出してきた。
彼らの言い分のなかには、プーチンはかっての帝国を夢見ているとか、ロシアはならず者国家だと断言する者までいた。
ウクライナ戦争の前まで、アメリカや日本とも肩をならべていたグローバル大国のリーダーに対して、それがいうべきことだろうか。
そしてほとんどが、ロシアは国際的なのけ者になったというんだけど、アメリカが先進国以外の国々からのけ者になっていることには触れようともしない。
雁首ならべた人たちはこれでも識者なのか。

彼らの発言をひとつひとつあげつらってもいいんだけど、「混迷の世紀」を観た人、あるいは録画した人がどれだけいるだろう。
番組を観ていなければ、わたしの書いたことは新年早々ウマの耳に念仏をとなえているようなものだから、ここでは納得できる意見だけに注目しよう。
まともなことをいっていたのは、フランスのもと外相のヴェドリーヌさんだけだった。
彼は冷戦時代でさえ米国はソ連に逃げ道を残していたのに、ウクライナのNATO加盟を支持した最近のアメリカは、ロシアをあとがないところまで追い込んでしまったと指摘し、イラク戦争のときフランスが米国に異をとなえたように、日本は米国に向かってどうどうと自己主張ができるはずだという。
残念ながら現在の日本の首相は、相手の顔をうかがって、米国に追従してさえいれば間違いないという岸田クンなのだ。
相手の立場を理解するという国家間の原則を無視し、子供たちの未来を破壊して、新しい、危険な時代を切り拓いたのが彼の功績であるとは。

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