ささげ銃
自衛官が射撃訓練所で教官や同僚を射殺したという事件。
キューブリックの「フルメタル・ジャケット」のなかに似たようなシーンがあったな。
映画になるくらいだから、アメリカの軍隊では、ああいうことはよくあるのかも知れないし、日本もようやく米国なみになってきたということか。
わたしも自衛隊にいたことがあるから、体験談を話し、最後にこういうことが2度と起こらないアイディアを披露しよう。
最後まで読むべし。
自衛官には年に何度かの実弾射撃が義務づけられている。
わたしが在任していたのはもう半世紀もまえのことだけど、だいたいの手順はいまでも変わってないだろう。
新兵たちは、今日は実弾射撃の訓練だってことで、トラックに積み込まれて訓練場に向かう。
実弾を撃った経験のあるやつなんてまずいないから、ああ、おれもついにコンバットかと、みんな胸がドキドキだ。
わたしのころは米軍払い下げのM1ライフルというやつで、これはけっこうよく当たる銃だったけど、なにしろ肉食のアメリカ人用だから重いのに苦労した。
訓練中にヘマをすると、ささげ銃(ササゲヅツ)のかっこうをしたまま、兵舎のまわりのグランドを一周してこいなんていわれる。
こういうときに教官に密かな殺意が芽生えるんだけど、わたしらの時代にはそれは殺人だということをみんな理解していたから、なんとか無事にすんだ。
訓練場につくと、腹ばいになって銃と弾丸を渡される。
銃のかまえ方、装填の手順などを教わって、まず最初に銃の照準合わせのための射撃を、3発ぐらいだったかな、やらされる。
つぎにカートリッジになった8発の弾丸を装填し、目標をねらって撃つ。
いまはどうだか知らないけど、だいたいこんなもので、このときに近くに殺したい人間がいれば、殺す機会はいくらでもあった。
とくに昨今のようにすぐ切れる若者が多いと、ふだんの訓練ではなにが原因になって教官を殺したいと思う人間が出てこないともかぎらない、
わたしの経験でも、体育の教官に全員のまえで平手打ちをされ、ののしられた新兵もいた。
ああいう教官が射撃場にいっしょにいたら、命がいくつあっても足りないんじゃないか。
だから2度と今回のような事件を起こさせたくなかったら、ふだんの訓練をする教官と、射撃の訓練をする教官はべつの人間にしておくことだ。
人を撃つのは台湾有事に引っ張り出されて、どこかの軍隊と対峙するときまで待ちなされ。
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