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2023年6月24日 (土)

潜水艇事故

タイタニック見学ツアーの潜水艇事故について、けっきょく水圧でつぶれたということらしい。
亡くなった人たちには気のドクだけど、これならあっという間だから、空気がなくなって徐々に死ぬよりはマシだったんじゃないか。
それにしても潜水艇の破裂音以外に、海底から何度か音がしたというのはなんだったのだろう。
もと海上自衛官でソナー班だったわたしの意見を書いてみる。

ソナーというのはこちらから音波を出して、その反響音から目標を見つけるものだ。
返ってきた音が金属の物体の反響音なのか、岩や砂のようなものか、あるいはそれ以外のものかを識別するのは、できなくないけど、かなりのベテランでないとむずかしい。
かりに潜水艇が海底のなにかに引っかかって動きがとれないとしたら、相手は静止したままだ。
静止したままのものを、反響音だけで発見するのはさらにむずかしいし、タイタニックに引っかかっているとしたら、潜水艇なのか沈没船なのかも識別しなければならない。

30分おきに音が聞こえたという。
もとソナー班にいわせると、乗員が船内で音を立てている可能性はあった。
逆にいえば、通信手段が故障した場合、これ以外に、海上にいる捜索隊に自分たちが生きていることや、居場所を伝える方法はないのである。
ベテランの潜水艇乗員なら、船内の金属部分を定期的に叩いたりして、自分たちが生きているという信号を発するだろう。

しかし問題はまだあって、沈黙の世界といわれているけど、海の中というのはけっこう雑音が多いのである。
わたしが自衛隊にいたころ、ソナーの訓練で目標らしきものを捉えたことがある。
しめしめと、それをしばらく追尾していたら、そのうち目標がふたつに分裂し、両方ともどこかへ自然に消滅してしまったことがあった。
なんですか、これって先輩に尋ねたら、魚群だろうという。
音は魚群でも反響するし、クジラの鳴き声が聴こえることもあるし、どこかべつの場所を走っている船舶のエンジン音が、海流や海水温の作用でとんでもないところから聴こえることもある(わたしが自衛隊にいたのはいまから半世紀まえの話なので、現在はもっといいソナーが発明されているかどうかは知りません)。

スペースシャトル・コロンビアの事故と同じで、事故というのは忘れたころに起きる。
いつかは出るはずの犠牲者が、たまたま今回の事故の乗組員だったのかも知れない。
こういう事件が起こると、あとになってからいろいろ問題が露呈するもので、正しい船舶検査も受けてない潜水艇だったという話もある。
乗員のなかには運営会社のCEOもいたから、そんな危険な船に責任者がみずから乗るかどうか疑問だけど、私企業だというから観光用の潜水艇を遊ばせておくわけにはいかなかったのだろう。
知床の観光船事故といっしょで、金儲け主義が5人を殺したといえるかも知れない。
日本の代表的な金儲け主義者の前澤友作サンも、そのうちマリアナ海溝に潜水する予定らしいから、艇がポンコツでないかよく気をつけなされ。

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