中国の旅/まえおき
ウクライナ戦争の終わりは見えてきた。
もはやウクライナの勝利はゼッタイにないだろう。
NHKの欺瞞もたっぷり追求したし、わたしがぶちぶちいわなくても、世間にはロシアを擁護する人たちも一定数はいるようだ。
ただし西側の出方次第では、まだまだ戦争終了まで時間がかかりそうである。
わたしはいま、生きているうちにしておきたい新しいアイディアに取り憑かれてしまった。
もうデタラメばかりのSNSにいちゃもんをつけるのも疲れたのだ。
わたしは過去に米国の紀行作家ポール・セローの足取りをたどって、地中海やアフリカをバーチャル旅行したことがある。
グーグルのストリートビューを使って、セローの本では文章でしか表現されてない土地を、現地の写真を眺めながら旅しようというもので、想像力の欠如した人たちにはきわめて有意義なものだった(と、わたしは勝手に思っているのだ)。
ただし画像の収集・加工まで、ぜんぶ自分ひとりでやらなければならないから、足腰が弱って旅に出られなくなった旅好きの年寄りでもなければ、とてもやっていられない手間のかかる仕事である。
わたしはいまちょうど足腰が弱るという状態で、しかも死ぬまで旅をしたいと考えている松尾芭蕉のようなじいさんなのだ。
というわけで、またバーチャル旅行の元ネタになる文章だけの紀行記がないかと探してみたけど、なかなかいいのがないね。
極地探検やエベレスト登頂なんてのは、どっちかというと体育会にふさわしく、軟弱な思索家の出番じゃない。
そんなことを考えているうち、ふとバーチャル中国旅行はどうかと思いついた。
わたしが初めて大陸中国へ旅したのは1992年で、これは鄧小平の改革解放政策がようやく軌道に乗ったころ、まだ兌換券や人民服など、毛沢東時代の不自由な生活もあちこちに残っていたころである。
この30年ほどのあいだにも、中国の景色は劇的といっていいくらい変わっているのだから、当時の写真と、ストリートビューで現代の同じ場所を比べながら旅をしたら、これはおもしろそう。
じつはわたしは以前ヤフーのブログで、わたしの中国紀行記を連載していたことがある。
おもちろいわーとコメントをくれるファンもいたんだけど、あいにく、その後ヤフーがブログ事業から撤退して、この紀行記は読めなくなってしまった。
かえすもがえすもモッタイナイ。
当時はまだストリートビューもなかったころだから、ポール・セローで味をしめたバーチャル旅行というのはおもしろい試みじゃないか。
中国なんかに興味はないという人もいるだろうけど、わたしにとってはなにより、自分のいちばん輝いていたころの過去への旅ということで、ノスタルジーもハンパじゃない。
また台湾有事だって頭に血の上っている人の多い昨今では、彼らに冷静になるよううながすこともできるかも知れない。
決めた、つぎの企画は大陸中国でのわたしの足跡をたどるものにしよう。
と思って、調べてみて、あきらめた。
中国ではグーグルが使えないのね。
もちろんストリートビューもない。
つまりいまの中国の各地を、ポール・セローの地中海やアフリカでやったように、全方位カメラの画像で観るのは不可能だということだ。
なんてことだ。
衛星写真だけは使えるから、不十分ではあるけど、これでなんとかゴマかせないだろうか。
先の短いわたしは、むむむと悩んでしまった。
わたしが大陸中国に行ったのは、なんだかんだで20回近くになるから、もとネタになる旅日記もそうとうの分量になる。
こんなものをバーチャルで追おうとしても、たぶん最終回まで生きてはいられないと思うんだけど、始めなければ終わりもないわけなので、ついに決心した。
これからブログで不定期に、わたしの中国紀行を連載しようと思う。
ダーウィンがはじめて新大陸を見て、生命の多様性に感動したように、わたしは30年まえの中国で日本とあまりに異なる光景に感動したのだ。
この30年間の中国の大変化を、わたしのブログで、そのビフォアからアフターまでを、みなさんにも俯瞰してほしいのである。
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