« パレスチナ | トップページ | テロ? »

2023年10月10日 (火)

中国の旅/包子

001a_20231010001001

上海に到着してすぐつぎの日は、ひとりで蘇州へ行く予定である。
出発まえに日本円を中国の元に替えておこうと、ホテルのフロントに行ってみたら、午後にならないとできませんという。
ふざけやがってと(腹の中で)思いつつ、ひとっ走り駅まで往復して時刻表を買ってくることにした。
手元にはまえの旅であまった兌換券がいくらか残っていたから、時刻表ぐらい買えるだろう。

ところで、ここまであまりわたしの撮った写真がないけど、まだフィルム・カメラの時代だから、やたらに撮りまくると帰国してから現像代がバカにならない。
そういうわけで蘇州に着くまではあまりフィルムを無駄にしないようにしているのである。

001b_20231010001101

駅まで徒歩で5分もかからない距離だから、ぶらぶら歩いていくことにした。
駅まえはあいかわらずの混雑だ。
まだ朝の7時ごろだったけど、もう食堂の包子(バオツ=小さい肉マン)は美味そうな湯気をあげているし、改札の出口近くでは、おばさんが縁台に雑誌や地図、時刻表などを並べていた。
わたしが兌換券を出して時刻表がほしいというと、おばさんは、兌換券はダメダメという。
じつは中国ではこの年から兌換券を廃止したのである。
わたしがこれしかないというと、まわりの人々が、いいじゃないか、売ってやれ売ってやれと声援してくれた。
カメラをかかえたわたしはいっぺんで日本人とわかるはずだから、中国の野次馬たちはまことに親切である。
とうとうおばさんも折れて、売ってくれた上海の地図と時刻表が、あわせて2元2角(この日のレートは1元が約12円だったから27円くらい)だった。

ホテルにもどって、フロントのわきにあるオープンしたばかりの喫茶店で、今日1日の計画を練ることにした。
コーヒーありますかと聞くと、まだちょっとぬるいけどという。
本当にぬるいコーヒーを飲みながら、わたしは時刻表をめくって蘇州行き列車を拾い出し、都合のいい時間を調べてみた。
蘇州まではせいぜい1時間半くらいのはずだけど、切符がスムースに買えるかどうかわからないから、充分に時間をみておかなければならない。
どうやら11時20分か12時42分、ダメなら13時50分あたりが使えそうだった。

列車のチケットは、龍門賓館の場合はホテルの中で買える。
1階のチケット売場へ行ってみたら、ふたつのカウンターに人が並んでいた。
わたしは行列に並ぶのが大きらいだけど、並ばなければいつになっても蘇州へ着きそうにないから、仕方なしに6、7人の後ろに並んでいると、まえのほうでバックパックを背負った女の子が「地球の歩き方」を読んでいるのが見えた。
日本人かいと声をかけて、話をしてみると、メガネをかけたやせっぽちの女の子で、上海には昨日着いたばかり、これからひとりで抗州へ行くという。
94年当時でもこんな勇気のある女の子がいたのである。

001c_20231010001401001d_20231010001401

べつにパスポートの提示もなしに、チケットはかんたんに買えた。
わたしがノートに〔蘇州・軟座・1人・NO.396 11:20〕と書いて見せると、係りの女性はチンテン(今日か)?と訊く。
うかつなわたしは、慎重に考えたにもかかわらず、やはり肝心なことをひとつ書き落としていたのだ。
今日のチケットということを確認すると、彼女はノートの列車ナンバーを 412に、時刻を 11:30分に訂正した。
なんじゃ、これは。
なんとか手に入れた切符は「上海鉄路局」発行の代用票というやつで、10×20センチの黄色いチケットに、1×3センチくらいの青い座席指定券がはりつけてあり、ほかに空調費という券もついてきた。
料金は25元4角である。
日本の金で300円くらいだけど、これには外国人料金と手数料が入っている。

今回の旅では朝食もつかないので、このあとホテル内のレストラでひとりで朝食をとった。
メニューを見るとろくなものがない。
わたしは少食なので、トーストとジュースだけあればけっこうなのにそれもない。
仕方なしにまずいハムエッグを食べ、今度は紅茶を注文した。
中国人はコーヒーを飲みなれてない。
外国からきた文化であるコーヒーは高価だけど、中国にむかしからある紅茶はえらく安いのである。

中国では、列車に乗ろうと思ったら、少なくとも1時間前には駅に行っていたほうがいいというので、わたしはほかの仲間と顔をあわせることもなく、腕時計を見て10時半にはホテルを出た。
ぶらぶらと駅へ向かうと、途中でグループのBさんとばったり出くわした。
駅のあたりを散歩してきたそうで、おもしろいところだねという。
どこへ行くんだと訊くから、これから11時半の列車で蘇州へというと、Bさんはまだ早いじゃないかという。
そういわれて気がついた。
日本と中国では1時間の時差があるので、まだ列車の発車まで2時間あったのだ。

002_20231010001201

2人で興味本位に、駅まえの立ち食い食堂みたいなところで、包子を食べてみることにした。
肉包子がなく、アン包子しかなかった。
日本の肉饅頭よりひとまわり小さいくらいで、ひとつが5角(6円ぐらい)だった。
小食のわたしなら20円ぐらいで朝食は間に合ってしまいそう。

時間があることがわかったので、いったんホテルへもどって、ほかのメンバーのご機嫌をうかがってみた。
彼らはこの日はW嬢の案内で市内見物をする予定だけど、CとDは前夜に呑んだ酒が強すぎて2日酔いだそうだ。

わたしは蘇州へ出発する前に、Bさんから1万円分の人民元を分けてもらった。
彼らは前日に、それぞれが、1万円分の日本円をW嬢に両替してもらっているから、わたしに800元を寄こしてもべつに困るわけではないのである。
わたしのほうは不便な兌換券だけで蘇州へ行くのは、あまりうれしくない。

003a_20231010001201

その後、時間がきたのでひとりで駅にゆく。
プラットホームへ上がるための長いエスカレーターの前には大きな駅員ががんばっていて、わたしの切符をみるとまだ入れないという。
これならべつに1時間前に行く必要もないではないか。
わたしは発車10分前まで、上客(乗客のまちがいではない)専用の待合室でぼんやりしていた。
なにかアナウンスがあるかと思ったのけど、発車時刻がせまってもなにもない。
不安になって10分前にエスカレーターでプラットホームへ上がってみると、大きな駅員は切符をちらりと見るだけでなにも文句をいわなかった。
指定ホームは切符に記入されていて、わたしの列車は9番ホームである。

003b_20231010001201003c_20231010001301

上海は多くの列車の始発駅だから、列車はもうホームに入っていた。
車両番号も切符に記入されており、車両にはちゃんと番号がついているから、なにも難しいことはなかった。
汚い車両も連結されていたけど、わたしの乗る1号車はオレンジに塗られた2階建てのきれいな車両である。

004_20231010001301

座席を確認してからふと見ると、となりのホームに停車中の列車は、わたしにとって夢とあこがれの、新疆ウイグル自治区行きシルクロード長征列車ではないか。
超長距離列車といってもグリーンに黄色いストライプの、ありふれた汚い列車である。
乗客たちは飲み食いしながら発車を待っていて、食事の残滓は平気で窓から捨てるから、線路の上はあいかわらずゴミだらけだった。
列車の服務員までが、車内のゴミを平気で線路に捨てていた。

ともかくも、わたしは想像していたよりはるかに容易に蘇州行きの列車に乗ることができた。
乗車時間は1時間だから、中国人たちのようにお茶を用意する必要もない。

| |

« パレスチナ | トップページ | テロ? »

旅から旅へ」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« パレスチナ | トップページ | テロ? »