インドという国
録画しておいた「GLOBAL AGENDA/急成長インドは世界をどう変えるのか」という番組を観た。
5月1日に放映されたものだからちと古いけど、わたしは毎日国際ニュースを追いかけるのに忙しくて、こういう別枠の番組を観ているヒマがなかったのである。
なんとなく真面目な時事番組に思えるけど、もう、なにがなんでもインドをこちら側に引き込もうというひどいプロパガンダだったねえ。
皮肉な見方をすれば、これほどアメリカ(とNHK)の窮状を物語る番組はないといえたけど。
番組の参加者は、インドからジャワハルラール・ネール大学の准教授、シンガポール国立大学の研究員、アメリカから新アメリカ安全保障センター・インド太平洋部長という女の人、そして日本からもとNHKのジャーナリストで、近畿大学教授という人。
まずわたしは彼らの発言に注意をした。
ロシア憎けりゃBRICSも憎いというNHKだから、また自分たちに都合のいい人間ばかりを集めたかも知れない。
特に注意をしたのがインドの大学の准教授さん。
インド人の代表といえるモディ首相が西側寄りでない現在、ふつうならインド人がNHKの希望通りの発言をすることは考えられない。
以前ニュースのなかで、一介の新聞記者まで、NHKに向かってG20でのインドの立場を説明していたくらいだ。
で、准教授さんの発言に注目してみると、公平を装うにはまあまあ納得できるような分水嶺にいる感じで、下心ありありのNHKにぴしゃりと反論する場面はいちどもなかった。
いまのインドは首相選挙のまっ最中だ。
モディさんと敵対する候補者の陣営から、国の方針に異議をとなえる人間を見つけるのはそんなにむずかしくないはず。
アメリカ人がアメリカの肩を持つのは当然としても、シンガポールも西側寄りの発言者を見つけるのはそれほどむずかしくないだろう。
やはり番組の脚本通りに発言する便利な識者を集めたとしか思えない。
2020年にはインドと中国のあいだで国境紛争が起こった。
だからわたしも2022年のG20の会議では、インドは将来をにらんで西側寄りの姿勢をとるだろうと思っていた。
ところがあにはからんや、アメリカの期待に反して、インドはあいまいな態度、これはアメリカの肩は持たないという意思表明である、をとった。
あのときはわたしも予想外の展開に驚いたんだけど、時系列で眺めれば、もうアメリカを頼らないというインドの姿勢ははっきりしている。
アメリカ人のインド太平洋部長サンは、アメリカとインドの結束はかってないほど強くなっているといっていたけど、どこを見てるのか、なにを見てるのか。
いまの米印関係はかってないほど“弱くなっている”というべきじゃないか。
なんとかしてBRICSの一角をくずし、インドを西側に引き込みたいアメリカ(NHKも)は、しきりにロシアや中国の悪口をいう。
インドもどっちつくか態度をはっきりさせないと、将来的中国と争いになったとき、だれも味方してくれませんよなどという。
しかし旗幟を鮮明にしないという昨今の途上国の風潮は、モディさんが始めたことだ。
中国との国境紛争は、かって中露が話し合いで収めた前例もあるし、血を見る争いになるかはまだ誰にもわからない。
そもそも世界3位の大国になろうというインドに、ますます矮小化する日本がお節介をやくようなことか。
わたしはインドの事情もすこしは知っているけど、この国は不思議な国である。
世界一の人口をかかえ、すぐに政治家が暗殺される国内対立や、頑迷なまでに宗教に固執する国民性、カーストをひきずる下層国民の悲惨さ、貧しい人々のあいだをウシがうろうろして、そのくせ数学やデジタルの分野では世界に抜きん出ている部分もあって、まるで混沌を絵に描いた国のようである。
そうした国がここまで来たということこそ、真の驚異ではないか。
日本を見ていると、国が衰えるというのはこういうことかと思ってしまう。
先進国の仲良しグループが束になってロシアに戦争をいどんでいるとき、どんな悪口をいわれても、ロシアだけで戦うというプーチンの決意は固い。
NHKは彼の爪の垢でも煎じて飲んだらどうか。
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