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2024年6月23日 (日)

中国の政策

20240623

録画しておいた「誰が伝統集落を守るのか」という番組を観た。
これは中国の雲南省に住む少数民族を取り上げたもので、NHKがよくやる外国の辺境に住む民族を紹介する番組のようだった。
わたしはこういうあまり知られてない民族を紹介する番組が好きで、過去にも「シルクロード・ソグド人」、「四川・美人谷」、「中国ガルゼチベット自治州」、「中国秘境/木馬氷上を馳せる」、「ベマ族・哀歌」、「ミャオ族・魂の歌」「謎の民サラール」など、DVDやブルーレイに焼いて録画コレクションに含めた番組は多い。
今回のそれは最近のもので、いくらか中国をけなすプロパガンダの臭いがしたけど、しかし観ようによっては中国政府が、少数民族の扱いにいかに苦労しているかを知らしめる番組にもなっていた。

ここで登場するのは雲南の国境近くに住むワ族といって、冒頭の写真のように独特の風俗をもつ少数民族である。
彼らは雲南の山奥で、むかしの日本人にも似た農耕生活を送っていた。
彼らの耕す畑は美しい棚田となっているから、日本人だって郷愁を感じる人が多いんじゃないか。

残念ながらワ族は、そのままなら中国の発展に乗り遅れた少数民族である。
乗り遅れた原因は、もちろん彼らが辺境に住んで昔ながらの伝統的な生き方を遵守しているからで、現在の中国の政策に責任があるわけじゃない。
習近平主席の号令で、2015年に中国は7000万人の貧困層をなくすと宣言したそうである。
国民を等しく豊かにしようとする中国政府は、発展の分け前をワ族にも与えようといろいろ頭をしぼった。
いちばん手っ取り早いのが、独特の文化をもつ彼らの境遇を逆手にとって、彼らの住まいを、それを売りモノにした観光地にしてしまうことだった。
めずらしいことじゃない。
わたしはハワイに行ったとき、ハワイの文化を紹介したテーマパークに連れていかれて、そんなものを見るなら海岸でバードウォッチングでもしてるほうがマシだと思ったことがある。
個人的なことはさておいて、観光事業は辺境に金を落とさせるきわめて効果的な手段なのだ。

当然ながら新しい土地に引っ越すのはイヤだ、長年暮らしてきたこの村で死にたいなどという年寄りもいる。
そういう人たちに同情するのは結構だけど、番組を観たかぎりでは、古い家というのは昼間でも暗い土間のある家で、水は部落の中心にある井戸から汲んでくるのだ。
引越し先の新しい家のほうは(画一的なのが個人的には気にいらないけど)、ひねるだけで使える電気・水道・ガスが備わり、たまげたことに車の駐車場までついていた。
これでは村民の大半が引っ越しに乗り気になるのも当然だ。
新しい家はタダなのかという人がいるかも知れないけど、もちろん相応の負担はあるだろう。
しかし村民たちがこれまで通り仕事をしていれば、払えないようなローンでもないようだし、もとの村には観光開発をするディベロッパーが入り、観光で上がった利益の中から引っ越しをした村民に配当金までつく。
もう至れり尽せりではないか。

以前に観た「中国・史上最大の移住計画」という番組は、貧しい黄土高原の農民をまとめて町に移住させようとするもので、このさいも中国政府は農民にさまざまな優遇政策をとっていた。
農民に課せられていた戸籍の変更禁止を撤廃し、引っ越し先に(画一的なのが気にいらないけど)一戸建ての住宅を用意し、さらに村民のために職業訓練所まで作り、年寄りには日本のシルバー事業のように、楽な仕事を優先的に斡旋していた。

こうしたことから、わたしか何をいいたいかというと、つまり現在の中国の少数民族政策は間違っていないということである。
世間には相手に無用な警戒感をいだき、とにかく国家間の対立をあおって、互いが憎しみ合うのを歓迎する人がいる。
そういう人たちにいいたいんだけどね。
いつまでも過去のことばかり持ち出して、搾取だ、抑圧だ、権威主義だ、独裁政治だというほうがおかしくないか。

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