マルケス
そういえばこの本は長いあいだわたしの本箱にあったなと思い出した。
全部読み切らず、けっきょく途中で放り出したことも思い出した。
読めもしない本をなぜ買ったのかと訊く人がいるかも知れぬ。
じつは1982年に彼がノーベル文学賞を受賞したとき、どんなものかとその短編集を読んだことがあって、これがとてもおもしろかったから、代表作の長編もということになったのである。
若いころ小笠原まで船旅をして、航海中に読もうと持ち込んだ記憶があるんだけど、アテがはずれて、長編のほうはあまりおもしろくなかった。
短編集に含まれていた作品の名前はぜんぶおぼえてないけど、たしか「エレンディラ」、「大きな翼のある、ひどく年取った男」、「この世でいちばん美しい水死人の話」などがあったはず。
読んで面食らった。
こんなまじめなナンセンス文学はないんじゃないか。
まじめでナンセンスというのは矛盾してるかも知れないけど、つまりドタバタで無理やり笑わせるのではなく、じっくりと読ませてそこはかとない笑いを誘うようなものだ。
「大きな翼のある・・・」というのは、ニワトリ小屋に転落して見せ物にされる天使の話で、「この世でいちばん・・・」というのは、エステーバンという美しい?水死人を描いたものだった。
いずれもバカバカしくてあり得ない筋立てだけど、それをおおまじめに語る文章がおかしい。
「エレンディラ」の中には、強欲な祖母に強要されて売春をする少女が登場する。
何人もの男を相手にして、もうくたびれたー、死にそうと叫ぶ少女を、祖母は容赦せずに働かせる。
この作品は映画化されているので、それっと(期待して)観に行ったことがあるけど、金をかけてないことがあきらかな凡作だった。
悪いことはいわない、これからマルケスを読んでみようという人は、短編集から入るとよい。
わたしも最初に読んだのが40年ちかくまえのことだから、ちっとは精神的に成長したかも知れず、もういちど長編の「百年の孤独」を読んでみようと思っているのだ。
と思って行きつけの図書館を検索してみたら、このタイトルの本はのこらず貸し出し中だった。
あわてて読んでも仕方ないから、じっと待つものの、そのまえにわたしの寿命が尽きるかも知れない。
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