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2024年6月12日 (水)

またありんくりんサン

ココログのありんくりんサンが「国境」についてご高説を垂れている。
尖閣諸島の領有権について、証拠となる過去の事例を持ち出して琉球のものだと断定し、その琉球(沖縄)は現在日本の領土だから、尖閣も日本のものだという論法らしい。
わたしも日本人だから、ここでは尖閣の地位については、どっちのものかという論争には加わらないけど、わたしがいいたいのは、ありんくりんサンのブログはカルト宗教みたいなものだから、注意しなさいということだ。

だいたい琉球はいつから日本の領土になったのだろう。
薩摩藩(鹿児島)が琉球を征服して(琉球征伐=1609)自藩領に組み込み、明治維新でそのまま日本政府が日本領土と勝手に宣言しただけじゃないのか。
琉球の歴史をヒモ解くと、ここはつねに日本につくか、中国につくかで揺れ動いていたことがわかる。
この問題は日本が清国との戦争に勝ったおかげで決着したけど、そのあいだ琉球は大国同士が頭越しに自分たちの運命を決めるのを、なすすべもなく眺めていただけだった。
国境というのはつねに強い国が勝手に引いたものだったのだよ。

沖縄が日本領だと主張するなら、中国がチベットや新疆に領土権を主張しても文句をいえない。
これらの土地は清の乾隆帝が征服した土地で、そのまま新中国が引き継いだものだから、沖縄の場合とそっくりだ。
ちなみに清というのは漢族の王朝ではなく、北方の異民族が建てた王朝である。

このことからもうひとつ、国境というのはなんなのかという問題が生じてくる。
長い歴史のなかで中国の国境はけっして永久不変のものではなかった。
よく知られている例を挙げるけど、ジンギスカンのモンゴル軍が中国(それどころか欧州の一部まで)を征服し、版図を大きく拡大したことがあるけど、この場合中国の国境はどこからどこまでといえばいいのか。
モンゴル軍が征服した場所はみんな中国領というのか、それとも一時的に中国の国境は消滅したというべきか。
ありんくりんサンは、国境というのはアメーバのように伸び縮みするものだということを知らないようだ。
アメリカだってアラスカやハワイを領土に組み込んだのは、そんなに古いことじゃないし、それどころかハワイを領土にするために、アメリカはそうとう残酷なことをした。

ありんくりんサンは、中国はかっての朝貢国をみんな属国扱いにしているというけど、歴史のなかにはチベットが強勢になって、逆に中国のほうが貢ぎ物を送った時代もある。
わたしは2005年に中国の青海湖へ旅をして、貢ぎ物としてチベットに贈られた文成公主の悲しみの記念碑を見てきたことがある。
なにか主張をするなら、歴史を大局的に眺めて、かならず公平で客観的であってほしいね。

そんなことは遠いむかしのことで、自分が話しているのは近代的な国際法で国境が画定された、最近の話をしているのだというかも知れない。
しかし領土問題に琉球を持ち出す時点で、ありんくりんサンが、少なくても明治維新後を問題にしていることは間違いがない。
近世のことだけを問題にしても、ありんくりんサンの説が閉鎖的で、せまい視点でしかものを考えてないことは、ここまで書いたとおりだ。
わたしは沖縄の基地問題にも触れないけど、彼の文章は恩着せがましいところがあって、沖縄県民の神経を逆撫でするようなところもある。
しかし日本は表現の自由が保証された国だから、ありんくりんサンがどんな信念を持とうと、それをブログで公開しようと、わたしに口を出す権利はない。
わたしが言いたいのは、彼のブログを読む人たちのほうに対して、彼はカルトの親玉みたいなものだからご注意ということなんだよね。

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