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2024年7月 5日 (金)

中国の旅/博物館と飛行機

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人民大廈で朝起きたのが8時ごろ。
今日は飛行機でウルムチまで飛ぶ予定だけど、飛行機の出発は夜の19時45分だから、それまで時間をつぶさなければならない。
西安には見どころが多いけど、あんまり遠くに行って、事故でも遭ったら飛行機に乗り遅れる。
列車と違って飛行機に乗り遅れると高くつく。
無理しないですむ市内の名所はと考えて、西安博物館に行ってみることにした(最近の博物館について調べてみたら、西安博物館は小雁塔のわきに新しいものが出来ており、わたしが見たものは「陝西歴史博物館」という名称で、そのままの場所にあるようだ)。
西安という街は兵馬俑にしても始皇帝の陵にしても、華清池、則天武后の乾陵、あるいは半坡遺跡など、ちょくせつ現場へ行ったほうが早いというものが多すぎるので、これまで無理に博物館に行こうという気が起きなかったのである。
博物館は市内の大雁塔の近くだから、時間つぶしにはもってこいだ。

そのまえにパソコンで知り合いにメールを送っておこうと考えた。
ウィンドウズ95が発売されて5年経つ。
まだWI-FIこそなかったけど、すでに国境を超えても瞬時に届くメールの便利さは世界に広まっており、中国でもちょっと気の利いたホテルなら、たいていパソコンが備わっていた。
有料だったけど、実験のためもあって、日本にメールを送ろうと考えたのである。

人民大厦ではパソコンが故障中ですといわれた。
仕方がないから、わたしの知っているなかでいちばんでっかい長安城堡大酒店に行ってみることにした。
ホテルのパソコンは、たいてい1階か2階の商務中心(ビジネスセンター)というところに置いてある。
上海あたりではこの部屋にミニスカートの、アメリカ映画に出てくるような美人OLが座っていることが多いけど、いやまあ、そんなことはどうでもよくて、わたしが行ってみたら、ちょうど欧米人の観光客が使用中だった。
彼は地球の反対側にいる友人のAからGくらいまでにメールを送るつもりらしく、いつになってもパソコンが空かない。
しびれを切らしたわたしは、先に博物館へ行ってくることにした。

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博物館に関してはあちこちで失望することが多いけど、西安博物館(陝西歴史博物館)はOK。
建物、展示品ともなかなか立派である。
正面から入ろうとしたら、日本人と看破されて、外国人はあっちから入って下さいといわれてしまった。
あっちから入ると30元だそうだ。
西安博物館は歴史に興味のある人には、なかなか有意義なところだと思うけど、あいにくわたしは西安に行くまで兵馬俑のことも知らなかった男である。
ここに載せた写真は、いちおう見てきましたという証拠のつもり。

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館内を見てまわっているとき、日本語のわかるメガネをかけた女性係員が話しかけてきた。
そのへんに座って会話をしたけど、スカートの裾を気にするあたり、清楚でなかなか好感が持てる。
日本人が結婚してほしいといったら、アナタどうしますかなどと不躾なことを聞いてしまった。
じつはあとでもういちど西安に行く機会があり、彼女はどうしたかなと、遠方から様子をうかがったら、どたばた走るおばさんになっていた。

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土産もの売場でも(ここを通らなければ出られないようになっているのだ)、これはまだ少女のような美人に、日本人デスカと話しかけられた。
ちょっと漢族と思えない顔立ちのクールな美人なので、ウイグルか、あるいは西域の小数民族かも知れない。
いいえ、漢族ですという返事で、近いうちに日本に留学するつもりですとも言っていた。
まるでナンパ旅行だけど、そのくらい日本人が中国娘に人気があったころである。

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また長安城堡大酒店にもどってみると、今度は中国人がパソコンを占領していた。
いつになっても空きそうにないので、スマンけどね、5分ばかり使わせてくんないかと頼んでみた。
そうやってようやく日本の知り合いにメールを送れたけど、帰国してから聞いてみたら届いてなかったそうである。
まだパソコンのメール機能が完ぺきではなかったころの話なのだ。

朝からほとんど何も食べてないので、ふらふらと南門のほうへ歩いて、たまたま道路っぱたにあった食堂に飛び込む。
中国のどこにでもある小さな店で、ビールと麻婆豆腐、生のトマト、それにキノコ料理という、わたしの定番メニューを注文するつもりが、キノコの絵を理解してもらえない。
うろおぼえでキノコはたしか「耳片」じゃなかったかなと思い、紙にそう書いたら、ほんとうにブタの耳を持ってこられてしまった。

そろそろいいだろうと、ホテルにもどり、門前で、途中で故障でもされたら困るからできるだけ汚くないタクシーをつかまえる。
やはり空港まで120元だという。
帰りの分など払わんぞ、全部で120元だからなと念を押して乗り込んだ。
空港へ向かう道すじは新興の開発地区らしく、新しい立派な図書館や体育館、いったい誰がこんなところに住むのかといいたくなるような一戸建ての住宅(邸宅)団地などを見た。
途中で黄河を渡り、ロータリーのような場所を左折すると、あとは一面のムギ畑の中の一本道になる。
あちこちに古墳らしい丘が点在しており、このあたりは西安の陵墓の集積地らしい。

空港までアルトで、まあ、ふつうの速度で走って1時間くらいで、西日を正面に受けつつ、無事に到着した。
若いまじめそうな運転手がぶつぶついったけど、全部でといったはずだぜとわたしがとりあわないでいると、彼はすぐあきらめた。
わたしは10元余分に払ってやった。

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さて飛行機である。
この旅の最大の関門かもしれない。
たったひとりで中国の国内線に乗ろうというのである。
これまでもいろんなトラブルに遭遇してきたけど、飛行機だってどんな予期せぬ障害が待ち受けているかもしれない。
行列が20人ぐらいできているウルムチ行きのカウンターに並んでみた。
そのうちとなりに並んでいたおじさんが、あ、そうそうといって、自動券売機に空港利用税を払いに行った。
せっかく並んだのに惜しかったけど、わたしもあわててそれを払いにいく。50元。

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前日に購入した航空券に座席の指定がないのが不安だったけど、カウンターで荷物を送る手続きと同時にちゃんとした搭乗券をくれた。
31Cという席だったけど、Cでは窓ぎわとは思えない。
なんでもいいやと開き直る。
どうせ外はすぐ夜になるから、わたしが上空からいちばん見たいシルクロードの砂漠は、まったく見えないに違いない。

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搭乗口は2階にある。
ぞろぞろと行列をつくるアメリカ人の団体に混じって2階に上がると、英語にまじって日本語のアナウンスも聞こえた。
2階でも搭乗前チェックがあった、というよりこっちが本物である。
こちらではちゃんとパスポートの提示を求められ、磁気探知機を使った身体検査もあるから、のんびりしていると遅れをとるところだった。
ほとんど待合室ですごすヒマもなく、ただちにバスに乗せられた。
飛行機は、機種はわからないけど、両翼の下に1機のエンジンをかかえるま新しい機体である。
わたしはヒッチコックの映画に出てくるようなクラシックな双発機を期待していたので、ちょっと失望した。
そのかわり乗り心地はすこぶる快適で、上海までのジャンボのエコノミー席よりよっぽどゆったりしているくらいだから、3時間くらい辛抱するのは何てことないだろう。
機内に入るとき民族服のスチュワーデスが出迎えてくれた。
離陸は19時45分、ほぼ定刻である。

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離陸して30分ほどして、飲み物のカートをころがしてきた客室乗務員に訊いたところ、ウルムチ到着はイレブン・オクロックだという。
まだ3時間あるぞ、ぜんぜん時計の針が進んでないじゃないか、オイ。
だいたいわたしが中国の国内線の飛行機にあまり乗りたがらなかった理由は、作家のポール・セローの記述によると、中国機の中ではみんなゲロゲロと嘔吐するというのがひとつ、女医のカクさんたちによると、搭乗するときみんないっせいに競争をするというのがひとつ。
その他、どうもあまりいい評判が聞こえてこないからだけど、今回の飛行で認識を改めなければなるまい。
これで景色が見えればいうことなしなんだけど。

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機内では食事も出た。
べつにわたしにとってありがたいものでもない。
食事をするのに、そうそうナイフやフォークのついた万能ナイフがあったっけなと、カメラバックから取り出そうとして一瞬うろたえた。
中国だろうがどこだろうが、飛行機の客室に刃物を持ち込むのは違反のはずである。
あぶないところだった。
それにしたって中国の飛行場のチェックはいいかげんなものだ。
飛行機が水平飛行に移ってからは、わたしの席からずっと前のほうまで一直線に見通せるので、なんだか列車にゆられているような気分である。

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