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2024年8月26日 (月)

中国の旅/バザールB

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バザールのほとんどの取引は路上でオープンに行われるけど、恒常的なバザール会場である「喀什中西亜国際貿易市場」ももちろん盛況である。
さすがにパソコンや先進機器はないけど、ひとつさかのぼった時代の日常品はなんでもありといったところ。
建物のなかには漢方薬店もあって、ワシントン条約が腰を抜かしそうな、いろいろな動物の体の一部、干物などが売られていた。
衣料品に興味のないわたしだけど、こういうものは興味が尽きない。

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貿易市場の庭でも、色とりどりの派手な反物に女性たちが群がっていた。
バザールはウイグル女性たちにとって、日曜日の銀ブラみたいなものと書いたけど、彼女たちの華やかさはいうまでもなく、金糸銀糸の刺しゅう、スパンコールじゃらじゃら、大晦日の紅白歌合戦そのままの衣装も珍しくない。
ただ彼女らが道ばたで平気でウンコ座り、またはぺたんと尻をつけて座っているのには目のやり場に困ってしまう。
彼女らが大胆な理由は、西欧ふうのパンティではなく、カラフルなズロース状のものを穿いているかららしい。
そんなものばかり観察していたわけじゃないけど、これも好奇心というものだ。
明治時代に日本に来たモース先生も、日本の混浴に興味を持ってしげしげと観察していたではないか。
知的好奇心はワイセツ論争より上を行くのだ。

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路上では生きた家畜も連れてこられて、年配の農民や業者がその品定めをしており、おかみさんや小さな女の子が、ウシやヒツジをひっぱって歩いていたりする。
路傍てはめずらしいかたちの農具や、手作りのナベやカマ、箒などが売られている。
現在では中国人も観光に熱心だから、バザールもいろんな民族が入り乱れていると思うけど、わたしが行ったころはほとんどウイグル人だけで、漢族の中国人はほとんどいなかった。
そしてけっしてお祭り騒ぎだけではなく、ペシミストであるわたしのこと、ここでも道ばたで赤い玉子を売っている老婆を見てエリナー・リグビーを連想したり、橋のらんかんにもたれている幼い兄弟を見て戦後の焼け跡の浮浪児を連想したりした。

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この人混みのなかで、黒い上下の、いわゆるギョーカイの人らしい2人連れに出会った。
日本人かと思って声をかけると香港から来たテレビ関係のスタッフだという。
彼らとはホテルにもどってからまた出会い、どうです、いっしょに食事でもと誘われた。
こちらも時間つぶしに苦労しているときだったから、いろいろ話をしてみた。
彼らはマスコミの事情に詳しく、日本の雑誌「太陽」の編集者をしているフミコ・ヒラノというエディターの友人がいるなどと話す。
これから仕事でホータンへ行くのだそうで、最後は愉快に別れた。
奇妙な友情のようなものを感じたけど、これがカシュガルにおける最後の実のあるエピソードになった。
「さまよえる湖」のヘディンになぞらえば、わたしにとってカシュガルの最期の日々は過ぎ去ったのである。
このあとわたしはホテルをチェックアウトした。
わたしがもういちどこの町を訪れることがあるだろうかという感傷を抱いて。

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つまらない私的な紀行記かも知れないけど、わたしにとっては若いころの、いちばん人生が輝いていたころの思い出をなぞるということで、これは楽しい仕事だった。
しかもお金がかかるわけでも、体力が必要なわけでもない。
部屋でパソコンさえあれば、いまわのきわまで続けられる、こんな恵まれた趣味を持っている年寄りって、ほかにもイマスカ?

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ホテルのカフェでさらに時間をつぶしたあと、列車の時間が近くなって、わたしは駅に向かった。
軟臥の上段という切符はとっくに手に入れてある。
つぎの目的地はトルファンだ。
3年まえには“夢のトルファン”だったあの町はどんなふうに変わっているだろう。
駅の改札にはX線の手荷物検査場がある。
駅員がわたしの荷物を透視してみて、大騒ぎを始めた。
忘れていたけど、わたしのバッグの中にはエイティガールモスクの近くで買った、刃渡り30センチの半月刀が入っていた。
これは列車に持ち込みが禁制の携帯品だそうで、その場で没収されて返してもらえなかった。
やれやれ、最後にとんだオチつき。

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