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2024年9月18日 (水)

中国の旅/ドライブ

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武威という街は平野のなかにあるけど、遠方には褐色の山並みが遠望できて、雪山ものぞいている。
ただし天馬賓館の北楼は、まわりをビルにかこまれていて展望はよくない。
昨日はいちにち曇りという印象だったけど、今日はまたいい天気になった。

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美人運転手が迎えにくる前にふらりと散歩に出て、まずホテルの近くの人民公園に行ってみた。
この街の人民公園はあまり大きくなく、入って正面に例の飛燕を踏む馬の像がどーんと立っている。
朝から太極拳をする人、小鳥の鳴かせ競争をしている人、そして物売りなどで、人出は多い。
バスの発着場のようすも見ておこうと大通りをぶらぶら歩いていたら、ガイドブックに旧古城壁が残る、と記されている個所に大きな城門が建設中だった。
ここに西安の城門に匹敵する観光の目玉を造ろうって魂胆らしいけど、現在のそれは足もとこそレンガであるものの、あとはコンクリートである。

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ぜんぜん知識のなかった武威という街だけど、現在はご多分にもれず発展していて、わたしが行った2000年ごろに比べると一転しているようだ。
中国政府は貧困撲滅を計り、繁栄の分け前を地方にも与えるべく、世界の観光地を熱心に研究したらしい。
貧しい辺境に金を落とさせる、それもただバラまくのではなく、持続的に落とさせるためには、辺境であることを逆手にとって、独自の文化や景観を見せる観光地にしてしまえばよいというのは、きわめてまっとうな考え方である。
わたしが中国を旅する以前から、桂林や石林、九寨溝・黄龍、そして敦煌などの景勝地・歴史的遺産は紹介されていたけど、国の繁栄にともなって、こうした動きはますます盛んになってきたようだ。
いまは中国との関係がギクシャクしているけど、将来平和がもどれば、日本人はグランドキャニオンやイエローストーンを見るために、なにもアメリカまで出かけることはないのである。
すこしまえにNHKが放映した「最美公路」というテレビ番組や、わたしの中国人の知り合いが送ってきた新疆の写真などを見ると、中国にはまだあまり世界に知られていない目もくらむような絶景も多いのだ。
ユーチューバーの諸君に言っておくけど、金儲けのネタ、世界に知られていないめずらしい景色は、おとなりの中国にごろごろしているのだぞ。
こういうのは早くやった者の勝ちである。

バスの発着場でようすをうかがう。
いろんなとこへ行くバスがあるけど、蘭州行きもすぐ見つかった。
運転手に訊くと約5時間、25元だとか。
別のもっと大きな車体の蘭州行きにも訊いてみると、時間はほぼ同じで、こちらは料金が20元だというから、やっぱり客をたくさん詰め込むほうが安いらしい。
車なんかなんだっていいけど、ひょっとすると武威から蘭州のあいだは高速道路で結ばれているのかもしれない。
わたしは烏鞘峠や、チベット族自治県が間近に見られるのではないかと期待しているので、あんまり簡単にすっ飛ばされてはおもしろくないんだけど。

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11時に女性運転手の劉さんが迎えに来た。
感心にひとりである。
もっともわたしが強盗かレイプ魔だとしても、彼女相手では簡単に組みしだかれてしまうであろうことは、すでに書いた。
とりあえず100元という約束で市内観光に出る。

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最初に行ったのが文廟というところで、甘粛省最大の孔子廟だという。
庭にアカシア(えんじゅ)の古木があるのが気になっただけで、おもしろくもおかしくもない。
敷地内に博物館があって、西夏文字という歴史的に貴重な文字を刻んだ石碑があるということだけど、どれがそれだかぜんぜんわからなかった。
ここではストリートビューで見つけたそのあたりの写真も載せておく。

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タクシーは万国共通のはずの進入禁止の道路標識を無視して、つぎに鐘楼に向かった。
運転手にもうしわけないから、いちおう見学してみたものの、おもしろいのは鐘楼のまわりの、びっしりは建て込んだ古い住宅くらい。
鐘楼というと西安でも張掖でもメインストリートの交差点のまん中にあったのに、この街の鐘楼は貧民窟の中のような、妙にハンパなところにあるのである。

どこか農村が見たいんだけどねとわたし。
タクシーはゴミ捨場のわきの汚い土壁の民家のわきに出た。
農村だよと劉さんがいうんだけど、彼女は農村と農家を混同しているらしい。

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つぎに向かったのはいくらか郊外にある雷台というところ。
雷台もぜんぜん見たいと思わないのだけど、やはり案内してくれる運転手にわるいので入ってみた。
有名な飛燕を踏む馬はここで発見されたのだという。
わたしが見たときはそれほどでもなかったけど、ここは武威の名を世界に広めた場所なので、最近では大きな公園、地下墓地を含めた壮大な観光名所になったようだ。
建物の中に飛燕を踏む馬のレプリカが飾ってあった。
オリジナルは、甘粛省の省都である蘭州の博物館に収納されているもので、ここにあるのはすでに緑青をふいた本物そっくりの銅製品であるから、なかなかレプリカとわからない。
売店でその像のミニチュアを売りつけられたけど、小さな記念バッチひとつですませた。

車にもどって劉さんに、どこか水の流れているきれいなところはないかと訊くと、うなづいた彼女が連れていったのが、海蔵寺という寺のそばにある公園。
やけに緑の多いところで、なるほど、ここには水のある大きな池があった。
案内された岩のあいだから冷たい湧水が流れ落ちていたけど、乾期で水が少ないらしく、観光用の手漕ぎボートの底がつきそう。
富士山や軽井沢で白糸の滝を見たことのある日本人には、ぜんぜん感動的なところではない。
公園内の売店に2匹のチンがいた。
えらく人なつっこいのでしばらくたわむれたが、劉さんはつまらなそうな顔をしてながめていた。

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こういうところじゃなく、もっと広大な農村風景が見たいんだよというと、運転手は、それじゃあ◯◯公園に行こう、ただしここから30キロあるけどという。
いいとも、そのぶんタクシー代を上乗せしようじゃないかということで、車を走らせる。
こんどはちょっと遠かった。
美しい農村風景の中を車は対向車、トラクター、自転車、歩行者をひらりひらりとかわしながらつっ走る。

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なるほど、今度こそはうるわしい農村風景の中を、川がゆるやかなカーブを描いて流れている風光明媚な景色が見えてきた。
写真を撮るのにもってこいのロケーションだ。
空き地に車を停めて、ヤナギの生える川岸に向かって歩き出したら、たちまち何人かのおばさんたちに囲まれた。
水辺にテーブルとベンチが並べられ、飲み物でも取りながら休憩できるようになっていて、ぜひウチのベンチへとおばさんたちの客引きである。
おばさんたちをひとり残らず無視して、水のそばへ寄ってみて、おどろいた。
まっ黒な、とても川とはいえない汚染されたドブ川だったのだ。
劉さんもびっくりしたらしく、わたしが川を背景に写真を撮ろうというと、あわてて首をふっていた。

チンのいた公園の水は湧水だったからきれいだったけど、このドライブで見かけた川で、きれいなものはひとつもなかった。
そろそろ帰ろうということになり、市内方向に向かっているとき、劉さんがもう1カ所公園があるというので、あまり期待しないままに寄ってもらうことにした。

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市民の憩いの場になっているらしく、林の中にバンガローふうの建物や売店(プールまであった)などが点在していて、行楽している人も多かった。
こんな公園を男がひとりで見たって仕方がない。
しかし公園のすぐわきまで農地がせまっていて、ムギ畑のまん中になにやら古い烽火台のようなものがあるのが目についた。
近づいてみるとレンガと土の建物で、最近の農家にしてはおそろしく頑丈に造られているから、これはやはり、なにか古い建造物ではないか。
ただし頑丈なのは土台だけで、この土台の上に、あとから乗せたような感じの四角い建物が乗っかっている。
わたしの想像では古い時代の烽火台の上に、誰かが勝手に家を造ってしまったというところだ。
そちらは窓もあり、ボロ布で目かくしがされていて、入口近くにはまだ数分まえに撒かれた水の跡まであって、いまでも誰か住んでいるようでもある。
ただしわたしがすぐ近くでじろじろ眺めていも、だれも出て来なかったし声もしなかった。
住人は世捨て人のように声をひそませていたのだろうか。

武威の街までもどって劉さんとともに食事をする。
わたしがビールを注文すると、彼女はフルーツ・ビールというものを注文した。
これは瓶の形こそビールと同じだけど、中身はラムネだった。
彼女はウドンに、わたしが注文したマーボトーフをぶっかけて食べていた。
わたしが長距離トラックの運転手だったころ、よくドライブインでライスにモツ煮込みをぶっかけて食べたことを思い出した。
どうもあんまりロマンチックな光景とはいえないようだ。
きれいな運転手とのデイト料金は200元で、食事はもちろんこっち持ち。

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ホテルへもどって、寝るまえにもういちど街へぶらぶら。
ふだん怠惰なわたしが、それでもあちこち歩きまわっているので、わたしのお腹はだいぶ減っこんだ。
バンドがゆるくてたまらないので、たまたまあったバンド屋の兄ちゃんに頼んで穴をひとつ増やしてもらった。
これで快調、気分よくホテルにもどったものの、武威はつまらない街である。
荒々しい砂漠の景色をずっと眺めてきたあとで評価したのでは気のドクだけど、この街でわたしの記憶に残るようなものはほとんどなかった。
トルファンとコルラのあいだの山間部で見た、険しい山あいで、馬に乗ってヒツジを追う男たちの生活、わたしが見たいのはそういう景色なんだけど。

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