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2025年2月 4日 (火)

よしこサン

録画した「地球鉄道」をじっくり見ながら、ああ、行きてえなあと身もだえしているワタシ。
ラオスから中国への鉄道旅は、まわりに古いままの少数民族の村が点在して、まさにわたしが見たかった異郷の山村景色なのだ。
しかしあきらめるしかない。
どんな人でも、たとえば旅にいのちを賭けたような俳人芭蕉だって、旅ができたのは長い時間の流れのなかのほんの一瞬でしかない。
わたしの列車は行ってしまったのだ(むかしロシアで聞いた詩の断片)。

番組を観て感心したのは、鉄道が開通したのは2021年のことなので、線路の敷石までまだみんな新しそう。
こんなものを敷くためにはそうとうの費用がかかるだろう。
もちろん慈善事業でやっているわけではないから、中国にもメリットはあるはずだ。
日本には中国のメリットばかりを言いたてて、これは周辺国に自国の製品を売りまくるものだ、資源を搾取するためのものだといいたがる人たちがいる。
しかし番組の中に鉄鉱石を運ぶ貨車も出てきたけど、ちゃんと対価を払って輸入をしているようだし、植民地主義の時代に欧米列強がしていたような、やらずぶったくりとはあきらかに違う。
お互いにウィンウィンであるべきだと、やらずぶったくられる植民地時代の被害者であった中国政府は、そんなやり方はしてないようである。

新しい鉄道のメリットは、なにもない僻地の農村にいきなり最新の交通機関が出来て、住人の暮らしは一変し、インフラが整備され、若者たちへの雇用が生まれたことである。
番組には乘車券もちらりと出てきたけど、庶民にはぜったい乗れないほど高価なものではなかった(123キロが日本円で1,460円)。
じっさいに乗車した庶民の中には、買い物や通院をするのが便利になったとか、列車なんて見たことがなかったという人や、観光客が来るようになって儲かるという人もいた。
新しい駅舎で張り切っている現地人の若い駅員が出てきたくらいだから、ラオス国内の駅施設の運営はラオスに任せられているらしい。

問題があるとすれば、わたしみたいな懐古趣味の人間には、よく保存されていた古い文化がすたれてしまうということぐらいだ。
しかしこれは先進国人の驕りにすぎない。
真っ暗な部屋で夜は本も読めない生活や、谷底まで水を汲みに行かなければならない生活より、だれだってひねるだけで電気や水道が使える生活のほうがいいに決まっている。
古い文化や生活はテーマパークで保存する方法があり、わたしはじっさいに中国のあちこちで「〇〇民族村」というものを見たことがある。

わたしはもういちどいうけど、日本も中国の一帯一路に参加して、いまからしかるべき地位を占めておくべきじゃないかね。
たとえばヨーロッパには英国という小さな島国がある。
小さいくせにヨーロッパでは、それなりの存在意義と尊敬をかちえている、日本と同じ立憲君主制の国だ。
さいわいいまの日本は中国人からもロシア人からも一目置かれているめずらしい国なのだから、わたしがいうのは、一帯一路のなかで日本もそういう位置を占められないかということなんだけどね。

こんなことを右翼の論客の櫻井よしこサンあたりが聞いたら、怒髪天をついてしまうかも知れないけど、いったいわたしの主張のどこに問題があるのかい。
怒髪天のよしこサンがいいそうなことを並べてみよう。
そんなことをしたら中国の得になるだけだ、中国は台湾を力で併合しようとしている侵略国家だ、共産党中国をますます強大にするだけだ、アジアという舞台に両雄が並び立つことは不可能なのだ。
さらにつけ加えれば、日本は中国に憎まれているんだから、将来日中戦争の仕返しをされて、上陸してきた中国軍に男は全員タマを抜かれる、婦女子は全員レイプされるというかも知れない。
こんなふうに中国の風下なんぞに立てるかという人にかぎって、アメリカにはなにをいわれても犬のように卑屈なのだ。

たぶん強大になった中国が恐ろしいもんだから、台湾有事にかこつけて、いまのうち日本も軍事大国になりたいというんだろう。
しかし日米が支援しなかったら、台湾は中国に侵略されて、民主主義が崩壊するだろうか。
反中デモをした香港でも虐殺は起きなかったし、台湾人を味方にしたい中国がわざわざ国民に恨まれるようなことをするだろうか。
いま世界で迷走中の民主主義を守ることより、日本は台湾人にハシゴをはずされないよう心配するべきじゃないか。
わたしは日本が台湾を見捨てても、台湾人はべつに困らず、中国と一緒になって繁栄を謳歌するだけだと思っているんだよ。

ラオス~中国の鉄道は、沿線が過疎地だからおそらく赤字経営だろう。
そんなことは意に介せず、どうして中国政府はこの計画を推し進めたのだろう。
一帯一路の目的が地球のすべての場所に光を当てようというなら、むしろ未来志向で、日本も見習わなければならないことじゃないかね。
いやいや、わたしはいきなり中国に協力しろといってるわけじゃない。
一帯一路に参加して、中国にもアメリカにも、きっちりといいたいことをいえる場所を確保しておこうといってるだけなんだよ。
そう考える政治家がそろそろ出てきてもいいんじゃないか。
これが「地球鉄道」を観たわたしの感想だ。

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