上海/豫園商城
中国人は贋物をつくる名人である。
歴史の長い国だからいろんな骨董品が出てくるのは不思議ではないけど、最近作られた新鮮な歴史的遺物も多いから注意をしたほうがいい。
何度も中国に行っているわたしは、たとえば水墨画にしても、同じ品物が、この店にもあの店にもあることに気がついた。
印刷されたものではないけど、つまり職人たちが、あの部分はAさん、この部分はBさんと、手分けして大量生産しているのだ。
インチキだと怒るまえに考えてほしいけど、印象派以前には、ダ・ヴィンチだって、レンブラント、ドラクロワ、クールベだって、じっさいにはひとりの画家が描いたわけではなく、先生は最後にサインするだけの作品が多かったということを忘れちゃ困る。
絵でなくて彫刻や焼き物ならどうか。
わたしは西安で有名な兵馬俑が、まだ制作中の粘土状態で、乾ききってない状態で天日干しされているのを見たことがある。
骨董市で購入したカエルの印章は、上下に分かれた部分が、ホームセンターで売られているような接着剤で貼り付けられていた。
こういう贋物はだれのために作られているのか。
もちろん知ったかぶりをする目利きの観光客のためである。
トルコで買おうとした海泡石のパイプは、最初 270リラだったものが、あっという間に50リラになったし、ベネチアを舞台にした映画「旅情」にも、だまされて模造品のガラス食器を買わされるキャサリーン・ヘプバーンが出てくる。
骨董品を買う楽しみは、現地の人との値切り交渉を楽しむものと割り切ったほうがよい。
帰国する日になった。
天気はまあまあだし、飛行機は午後の遅い時間なので、それまで時間をつぶさなければならない。
わたしは骨董品というかガラクタ市というか、そういう店ばかりが集まった通りを見物に行くことにした。
上海で有名な骨董品通りはいくつかあるみたいたけど、有名な観光名所の「豫園」から近い、東台路というところにもある。
ついでに上海が初めてのミーハーおばさんに、豫園を見せてやることにすれば、時間つぶしによさそうだった。
若いころなら錦江飯店から歩いていけない距離じゃないけど、いまのわたしはくたびれるのは厳禁なので、地下鉄を利用することにした。
上海の地下鉄は出来てからまだ30年くらいだから、車両もきれいだし、時間も日本並みに正確である。
この日本並みというのが、世界の多くの国で常識ではないんだけど、上海の地下鉄は本数が多いから、ちょっと待っていればすぐにつぎの便がある。
すべてのホームには安全のためのホームドアが備わっているし、東京に匹敵するくらい、便利で快適、それが上海の地下鉄なのだ。
過去に豫園を見学したことのあるわたしは、ミーハーおばさんに説明する。
豫園てのはねえ。
太湖石というどこのウマの骨がわからない石を並べた、めちゃくちゃつまんないところなんだよ。
おばさんは中国に関心はないし、豫園についてもまるで知らないから、あらそうと従順である。
豫園はつまらないところだけど、そのまわりが豫園商城といって、レストランや土産もの屋が軒を接した浅草の仲見せみたいににぎやかな場所だ。
そこだけ見物しようと、わたしたちは豫園そのものには入らないことにした。
つまらないくせに入場料を取るんだぜというと、おばさんは一も二もなく賛同した。
これは個人的主観だけど、じっさいわたしは中国の神社仏閣、庭園や遺跡などを素晴らしいとは思わない。
蘇州や洛陽、開封、西安などでいろんな観光名所を見たけど、建物については中国の美的センスがさっぱり理解できないし、これがキリスト以前の住居跡ですなんていわれても、ぜんぜん興味がわかない。
感心したのは城壁のように日本にはない巨大なものと、戦乱のあとを物語る穴のあいた頭蓋骨くらいだ。
豫園までの地下鉄は、まえに乗ったものとはべつの路線だったけど、みっつ目の駅だからあっという間に着いた。
かって知ったるところでも、地上に出ないことには自分がどこにいるのかわからない。
地上に出てみると、緑の多い公園のわきで、すぐ近くに高速道路の高架が走っている。
豫園はどこじゃという按配だったけど、みんながぞろぞろ歩いていく方向へわたしたちもついて行くことにした。
それにしても最近の中国に緑は増えた。
わたしは初めて中国の蘇州や無錫に行ったとき、田舎ならたくさんの花が見られると期待したのに、まるっきり肩透かしだったおぼえがある。
むかしの中国では生活に追われて花どころじゃなかったのか知れないけど、そんな中国の街が、30年前とは大きく変貌して、いまではパリ(行ったことないけど)や東京並みに緑の多い都市になった。
近代都市なら緑は多くなければならないと、中国も教条的考えに到達したのかも知れない。
豫園というのはかっての大官の屋敷跡だそうだ。
しかし日本の金閣寺、銀閣寺も高位の人間の屋敷だったのに、そのワビサビのある景色とはだいぶ違っている。
中国の大官の趣味が知れるけど、ひょっとすると緑が多く、池があるというだけで、中国人の尊敬に値したのかも知れない。
肝心の豫園には入らなかったのだから、ここに載せた園内の写真はネットで見つけたものと、わたしが過去に撮ったものである。
最近の写真で見ると、池に金魚か錦鯉か知らんけど、赤い魚がたくさんいる。
以前にいたのは亀ぐらいだったから、おおかた日本の庭園を見習ったのではないか。
土産もの屋をのぞいて歩くのは楽しかったものの、それだけてわたしはだいぶくたびれてしまった。
骨董通りのある方向をながめてみると、大きな高層団地が三つ、四つそびえているのが見える。
それより先に行くのかとうんざりした。
豫園商城を抜けた裏通りに骨董やガラクタを扱う店が1軒あったから、そこをのぞいて、骨董通りはどうでもいいことにした。
わたしの足はどうしようもないくらい衰えていたのだ。
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