上海/蘇州河
上海の空の下、蘇州河は流れる・・・・
どこかのシャンソンみたいだけど、その蘇州河はむかしよりきれいになっていた。
2000年の中国映画「ふたりの人魚」では、有名な外白渡橋(ガーデンブリッジ)から中国の女優さんが河に飛び込んだ。
野菜クズやネズミの死骸がただようような河だったから、根性あるなと思ったけど、いまならきれいなった日本の隅田川に飛び込むのと大差ないかも知れない(ちなみに映画の原題は「蘇州河」である)。
またシャンソンみたいだけど、蘇州河は黄浦江に流れ、黄浦江は長江に合体して、茶色に濁ったまま海にそそいでいる。
わたしは飛行機から、くっきり色けされたその潮目を見たこともある。
中国の古典を読むと、そのスケールの大きさにいつも驚かされてしまう。
なにもかも過去に押しやって、歴史は進む、世界は変わっていく。
「三国志」のラストは、登場したすべての英雄豪傑が死んだあと、生き残った詩人が、長江のほとりで人間の営みの空しさを嘆く場面じゃなかったか。
まことにこの国は時間も空間も広大だなと思う。
思わない?
そりゃあんたが若いからだ。
チンチンも立たなくなったじいさんで、いくらかでも詩心があれば、そう思うようになるもんさ。


わたしとミーハーおばさんは、四川路橋のたもとから蘇州河の河岸を歩いて下ることにした。
感心したのは、河の堰堤が花が植えられ、遊歩道が作られ、椅子とテーブルが並べられた、まるでセーヌの河岸のようになっていたことだ(セーヌに行ったことないけど)。
かってのこのあたりは、倉庫の裏みたいなつまらない景色しかなかったのに、新亜大酒店から外灘に出るのに都合がいいので、わたしは何度も通ったことがある。
残念に思うのは、当時は見るもの聞くもの、現代人が過去にタイムスリップしたような、新鮮なおどろきに満ちていたのに、新しい遊歩道には、そこまでの驚きはないことだ。
混雑というほどではなかったけど、この遊歩道を散策する中国人観光客も多く、彼らが浅草やスカイツリーのついでに、隅田川のほとりを散歩するのと大差なかった。
むかし四川路橋のあたりをうろうろした当時の写真と、現在の写真を比較してみよう。
バスや自転車がごたまぜの出勤風景だけど、そんな混雑していた橋の界隈は、いまではひじょうにすっきりした。
これを見ても、人口を分散させて混雑を緩和させようとした中国政府のおもわくが成功したことがわかる。
日本でもよく東京の一極集中を解消させようという試みがニュースを騒がせることがある。
しかし民主主義だかなんだか知らないけど、まず土地の収用をするだけでとてつもない費用がかかるので、たいていは途中で挫折する。
こういう点では一党独裁の中国は速い。
有無をいわせず人々を拡散させ、けっきょくは国民が幸せになれるなら、いったい共産主義というものは、それほどケシカランものだろうか(“共産主義”ではなく、“新資本主義”と呼んでほしいね)。
わたしは四川路橋のたもとでいろんなことを考えた。
クリークの多い田園地帯の小さな河が、租界ができたおかげで、さまざまな人間模様を産んだ。
租界時代にはアヘン中毒の娼婦が、前途をはかなんでこの河に入水したかも知れないし、ギャングの抗争で、簀巻きにされたまま放り込まれ、翌日は土左衛門として上がったメンバーもいたかも知れない。
上海は日中戦争の舞台にもなったから、日本の将兵のなかには・・・いや、そんな余裕はなかったか。
作家の魯迅も何度かはこの河のほとりで、だらしない中国の国民を思って悶々としただろうし、日本軍と戦った蒋介石は、戦後こんどは同じ中国人と戦ったあげく、台湾に逃れ、そこで死んでからすでに50年(半世紀)になる。
台湾はというと、いまでは民主主義の国として、西側の有力なメンバーだ。
そして中国は大国になり、台湾は・・・・
わからない。また大勢の若者の血が流れるのかも知れない。
とちゅうに蘇州河や黄浦江めぐりの観光船の船着き場があった。
このくらいきれいになったのなら、運河クルーズも悪くないかなと考える。
上海の空の下 恋人たちが歩いている
外白渡橋のたもとには 座っている哲学者がひとり
ミュージシャンがふたり 観光客が数人
上海の空の下 蘇州河は流れる(有名な歌のもじりざんすけどね)
四川路橋のたもとから300メートルほどで、マントを着たバットマンのようなシルエットの、上海大厦(ブロードウェイマンション)の前に出る。
これも租界時代を象徴する上海の名所だけど、まわりに新しいビルが乱立するようになって、いまでは古臭さだけが目立つようになってしまった。
とうぜん新亜大酒店と同じように優秀歴史建築に指定されているだろうから、持ち主も勝手に建て替えられなくなっているのかも知れない。
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