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2025年6月 4日 (水)

上海/菜館のA

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人間は生きるために食べるのか、食べるために生きるのかという下らない論争があったみたいだけど、もちろんそんなことを無視しても、人間ならメシを食わなければならない。
中国にいるあいだ、わたしたちも毎晩のように食事をした。
中国といえば、とうぜん中華料理である。
味については中国人と日本人はかなり嗜好が異なるようで、たとえばわたしの好きな麻婆豆腐にしても、本場の麻婆豆腐は日本人からすると、ちょっと甘さが不足しているようである。
逆のことを日本に来た中国人も考えているでのはないか。

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そんな微妙なことはともかく、中国では菜館(レストランのこと)に不自由しない。
食事をするところはいくらでもあるので、到着した日の夜からわたしたちは街をうろつきまわって、良さそうな菜館を探した。
錦江飯店からいちばん近い交差点のあたりは、庶民的な店が軒を接している。
そんな中からわたしが目をつけたのは、軒先に赤提灯の並んだ「避風塘」という店で、香港料理のチェーン店らしい。
1998年創業というから中国としてはまあまあ老舗で、通りからガラス窓ごしに眺めると、店内はほどほどに混雑していて、活気がある。
念のためネットのグルメ情報で調べてみたら、わたしの観た情報では「満足度ランキング 47位」とあった。

ウエイターの若者が菜単(メニュー)を持ってきた。
日本語の菜単はないのと聞くと、わたしたちが日本人であることがわかったのだろう。
彼はスマホを持ち出して、ようこそいらっしゃいました、なんなりと用件をお申し付けくださいという。
もちろん彼は中国語でいい、スマホに翻訳させたのである。
それでもミーハーおばさんは、えらいわねえ、頑張ってるのねと感激のようす。

レジの横に大きなモニターがあって、この店のコマーシャル・ビデオを流していた。
流されている映像はカニ料理のものが多かったから、この店のお薦めはカニなのかも知れない。
しかしまだ上海蟹の季節ではないし、カニはねえとわたしはいう。
むかし香港でシャコ料理を注文したら、小さなシャコを煮えたぎった油のなかに放り込み、さっとすくっただけで、肉と殻が離れず、ひじょうに食べにくい料理に当たったことがある。
カニは食べにくいからなと、べつの料理にすることにした。

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持ってきてもらった日本語入りの菜単の中から鶏料理を選んだ。
菜単は写真つきで鍋のなかに鶏肉らしきものが並んでいて、ニワトリということは字づらでわかるけと、どんなものが出てくるのかまるっきりわからない。
ほかにセロリとエビの炒め物と、中国のエビ入りシュウマイを頼んだ。
わたしは野菜が食べたかったけど、メニューの中に生野菜はひとつもなかった。

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紹興酒があったから、これも注文した。
わたしはグラスのつもりだったのに、丸ごとの1本がでんとテーブルに置かれた。
古越龍山という、日本でもよく見かける紹興酒の8年ものである。
あとで和平飯店で頼んだワインもそうだけど、中国では不用意に酒を注文するべきではないようだ。
まあ、あまったらホテルに持って帰ればいいやと、そのまま栓を開けてもらった。
中国では紹興酒はワインより安物の酒なのだ。

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やがてテーブルに携帯コンロと土鍋が置かれた。
火をつけて7分間待って下さいと、ウエイターの若者がタイマーをセットしてくれた。
これがわたしたちの頼んだ鶏料理らしいけど、そうとうに予想と異なっている。
できあがったものは、肉はどうでもいいけど、スープが美味しかったので、わたしは汁ばかりをすくって飲んでいた。

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この晩、わたしたちが注文したのは紹興酒と料理が3点で、レシートをもらったからそれを載せておこう。
言い忘れたけどこの日のレートは、日本円1万円が470人民元ぐらいだったから、1元が21円見当で、わたしたちの食事代は206元=4千3百円くらい(わたしの計算はつねにおおざっぱだけど)ということになる。
紹興酒まるごと1本も入っているから高くはない。
見栄を張ると高くつくけど、食事をそのへんの街角の店ですませるなら、まだまだ中国の食事代は安いといえる。

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この店には帰国するまえにもういちど行ってみた。
すると顔見知りのウエイターの若者がまたやってきて、ミーハーおばさんにスマホを見せた。
そこには「今日は時間なのでわたしは帰りますが、どうぞごゆっくりしていって下さい」と日本語が表示されていたそうである。

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