
高校生のころ、図書館にあったウィリアム・シャイラーの「第三帝国の興亡」という本に熱中したことがある。
これはナチスドイツの台頭から滅亡までを描いた、たしか1から6巻まであるような大著述だったけど、その中にこんな記述があった。
連合軍がノルマンディーに上陸して、ドイツの敗色が濃厚になってきたころ、ドイツ軍の高級将校らによるヒトラー暗殺の企てが持ち上がった。
暗殺は失敗して、ヒトラーはかろうじて生還し、首謀者たちは全員がお白州のもとに引き出された。
このあとかたち通りの裁判が行われたけど、もちろん全員が死刑まちがいなしのお約束ごとの裁判だった。
被告たちはできるだけみっともなく見えるようにと、手をはなせば落ちてしまうダブダブのズボンをはかされ、絞首刑の判決が出たあとは、長く苦しむようにピアノ線で吊るされたという。
この場面は、プロパガンダとして使うために映像で撮られたというから、わたしはいつかそれを観られるのではないかと思っていた。
おとといのNHKが放映した「映像の世紀・ヨーロッパ2077日の地獄」というドキュメンタリーに、その裁判のようすが出てきた。
絞首刑の場面はさすがに省略してあったけど、裁判所で被告がダブダブの服を着せられているのはその通りだった。
この「2077日の地獄」は3回に分けて放映された最終回で、わたしは1回目を観たとき、ウクライナ戦争でロシアにかこつけるようなあからさまなプロパガンダに辟易して、途中で観るのをやめてしまった。
それが最終回では、わたしも納得できる内容になっていた。
最終回でベルリンの地下壕に立てこもったヒトラーは
「この戦争が負けだということはわかっている」
「しかし世界を道連れにして滅びるのだ」
といったとされる。
彼は国民を地獄への道連れにして最後まで戦おうとしたのである。
これはウクライナ戦争におけるゼレンスキーさんと同じではないか。
ヒトラーをゼレンスキーさんに置き換えれば、この番組はウクライナ戦争そのものである。
指導者が降伏しないからウクライナ市民の無益な戦争は続いているのだ。
いったいそこまで戦争を続けることになにか大義があるのだろうか。
あまり話題にならないけど、もしもヒトラー暗殺が成功していたらどうだろう。
じっさいにこのときヒトラーは、体に重大な損傷を受け、死ぬまで後遺症に悩んでいたことが番組であきらかにされている。
あと一歩で暗殺は成功していたのである。
もしそうなれば、暗殺の首謀者はドイツ軍の高級将校が多かったから、彼らが新政権をつくり、連合国に降伏をして、すべての責任をナチスに押しつけ、少なくてもドイツ国民がヒトラーに地獄までおつきあいすることはなかっただろう。
ヒトラーが地下壕に立てこもって最後まで抵抗したおかげで、けっきょくベルリンはロシア軍(ウクライナ軍もいっしょ)に蹂躙されることとなった。
ベルリンに進攻したロシア軍について、いろんなことがいわれているけど、スターリンが無理に叱咤激励しなくても、彼らは自主的に市内に突入したに違いない。
この戦争でロシアは最大の人的損失をこうむった。
アンバランスなくらい男の数が減ってしまったくらいだから、兵士たちは復讐の念に燃えて、われ先にと市内に突入し、ドイツ人を殺戮し、女性をレイプしまくったのだろう。
連合軍が上陸すると、それまで押さえつけられていたフランスは元気づいて、やがてパリも解放された。
「2077日の地獄」では勝利したフランス国内でも、ドイツ軍やそれに協力した市民に対して、残虐行為があったことが描かれる。
こういう点でNHKにしてはめずらしく公平なものだったけど、観ていてバカバカしくなったのは、ヒトラーに熱狂し、彼を支持して、そのいいなりになった大半のドイツ国民のこと。
とくに暗殺事件から生き延びたヒトラーには、神がかり的だという評判が立ち、彼についていけば戦争に負けるはずがないといううわさが飛び交ったという。
日本人がそのうち“神風”が吹くさと、非合理的なことに執着していたこととどこが違うかね。
番組の最後に大戦が終わったあと、ウクライナの広場で処刑されるドイツ軍人たちの映像が出てきた。
そして公平だと思ったドキュメンタリーは、戦死者の象徴とされる小旗が並んだ現在のキエフの広場に切り替わって、この部分だけウクライナ戦争のプロパガンダになってしまう。
いったいおびただしい小旗はだれのせいだ。
国民を道連れにしたゼレンスキーさんと、戦争をあおりまくった日本のNHKを始めとするマスメディアのせいじゃないのか。
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