他人のYouTubeの1
Bappa Shotaというユーチューバーが、中国の新疆ウイグル自治区に行って、そのあと行方不明だとか、ひょっとするとなにか都合のわるいものでも撮影して、当局に拉致されたのではないかと騒がれていた。
彼はそのあと、つぎの映像で姿をあらわしたけど、以前に比べてやつれているとか、顔にアザがあって当局に暴力をふるわれたのではないかなどと、穏やかでない憶測を呼んでいる。
やれやれ、またかというわけで、その映像をじっくりながめてみた。
わたしがまたかと思ったのは、ウイグル自治区なら当然こうでなければいけないという見方しかしない人たちが、依然として多いからである。
Shota君もそのひとりらしく、映像の表紙というか、前置きの部分では、ウイグル人は中国政府によって宗教や言語、アイデンティティが制限されたとか、2009年の大規模デモではウイグル人が一方的に被害者であるような言い方をしている。
そして当局から警戒されているんじゃないかと気にしているけど、これは卵が先かニワトリが先かの論争だ。
つまり西側が非難中傷を繰り返しているとき、日本人が新疆に乗り込めば、とうぜん向こうは警戒するだろう。
映像は新疆のウルムチとカシュガルふたつの街の探訪記になっていて、前半のウルムチを観たかぎりでは、中国を敵対視するプロパガンダではなかった。
むしろ堂々と顔をさらして本音でしゃべるウイグル人男性が出てきて、日本人の彼を自宅に招待し、世界中がウイグル自治区を問題にするけど、そんなことはないよと発言する。
これではハナっから中国を信用しない人には、その男性自身、当局のまわし者じゃないかと思えるかも知れない。
わたしは映像を隅から隅までにらんでみた。
Shota君はウルムチ市内をあちこち歩きまわる。
わたしでも当然行くであろうストリートマーケットで、屋台のメシを食ったりする。
そしてウイグル料理やカザフ料理についてあれやこれやと、このへんはありきたりのYouTube映像と変わらない。
しかし疑り深いわたしは、そういう映像の背景にも注目するのである。
マーケットにはほかの国の旅人も多かったそうで、現地で知り合ったネパール人女性も、こんな安全な街はない、女性が深夜に歩いても危険はないし、わたしはここでの生活を楽しんでいるわといっていた。
映像のなかには監視カメラが多いのが気になるという部分もあったけど、わたしがまえに書いたとおり、それが中国の街を日本並みの安全なところにしていることはいなめない。
背景の街並みからは、車の往来は激しく、みんな活発に仕事をしているようすがうかがえる。
ウルムチ市の郊外には近代的な高層アパート群が出来ていて、前述のウイグル人男性もそこの大きな部屋に住んでいた。
これでは逆に中国政府のプロパガンダじゃないかと思ってしまうけど、彼は小さな女の子を連れた普通の父親で、そんな工作がされているかどうかは、自分で映像を観て判断してほしい。
少なくてもウイグル人が弾圧されているようすはまったくなかった。
映像の中に個人の旅人では撮影できないような、ドローンを使った俯瞰映像も含まれているから、この制作にはかなり大掛かりな制作会社が関わっているようでもある。
Shota君はそうとうに年期の入ったユーチューバーで、調べてみたら、過去に中国以外にも世界のあちこちの映像をアップしていた。
わたしは彼がわたしと同じ、好奇心につき動かされてどこにでも鼻を突っ込む、公平客観的な旅好きの若者のひとりだと思った。
ところが後半のカシュガルに行くと、見方が逆転する。
映像全体を観るかぎり、やはり彼もステレオタイプの日本人のようだった。
彼の映像が前編後編に分かれているように、わたしの文章も前編はここまでにしておこう。
映像の後半は、わたしも行ったことのあるカシュガルが出てくるので、それについてはわたしのブログも後編で書く。
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