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2025年9月24日 (水)

他人のYouTubeの2

1372

前々項の続き。
Bappa Shota君は、新疆ウイグル自治区のウルムチからカシュガルに移動する。
わたしも過去に両方の街に行ってみたことがあるので、彼の YouTube映像が公平で客観的なものかどうか、慎重にながめてみた。

映像を観て驚くのは、カシュガルにも高層団地が乱立していて、わたしが行った25年前とは大幅に変わっていたこと。
ここでは Shota君を案内するウイグル人は、ウルムチの場合と違って顔を見せない。
ということは、客観的な立場の人ではない可能性があるし、反中国のウイグル独立運動のメンバーかも知れない。
内容が、中国政府はウイグル人を弾圧しているという、よくあるパターンなのでよけいそう思う。
わたしはこれまで中国が少数民族を弾圧していないという証拠を見つけるたびに、このブログで紹介してきた。
いいかげんに分裂と対立を煽るだけのステレオタイプな考えを捨てようよ。

映像のなかに、中国政府がウイグル人を弾圧している6つの証拠というものが出てきた。
1.モスクの破壊、2.宗教集会の禁止、3.女性のベール着用禁止、4.男性の長いヒゲ禁止、5.子供へのイスラム教育の禁止、6.無許可の宗教書籍の所持禁止などである。
これは全部デタラメだ。
モスクは破壊されてないばかりか、むしろ大切にされている(映像のなかにもきれいなモスクが出てきた)し、イスラム教徒が集まって祈りを捧げないことは考えられないから、日常的に集会も開かれているだろう。
女性のベール禁止なんて、当の女性のほうから感謝されているくらいだ(わたしのブログを見よ)。
男性の長いヒゲ禁止にしても、映像のなかにじっさいに長いヒゲの男性が出てきたし、それともなにか、イスラムの経典に、男性はヒゲを伸ばしたままにすることなんて書いてあるのか。
ウイグル人はいまでもウイグル語(と中国語)を学んでいるし、無許可の宗教書籍が独立やテロを煽るようなものなら、禁止されて当然じゃないか。

住んでいた家を取り壊されたとか、ウイグルのアイデンティティを破壊されたという話がしょっちゅう出てくるけど、日本でいえば井戸しかないカヤぶき屋根の農家から、ガス水道の通じた近代的な家に引っ越しをさせられたのだから、いちがいにケシカランといえるのか。
どこの国の人々だって、ひねるだけでガスや水の出る生活のほうがいいに決まっているので、なんでもかんでも古い伝統を他国に強要するのは文明人の驕りである。

映像には肝心の強制収容所はひとつも出てこない。
出てくるのは西側がプロパガンダに使った映像だけで、それによると100万人から200万人のウイグルが収容されているという。
2020年の統計で、ウイグルの人口は1,162万人だから、これではウイグル人の10人にひとりか5人にひとりということになってしまう。
独立志向のウイグル人が絶無ということは考えられないから、どこかに収容所があってもおかしくないけど、数字はあきらかに盛りすぎだ。

強制収容所ではなく、ふつうの職業訓練所となぜ思わない。
中国政府は農業と遊牧しか知らないウイグル人に、近代的な仕事を教えていたんじゃないか。
なんでもかんでも悪意でとればこうなるという見本で、じっさいに映像では、収容所と職業訓練所がごちゃまぜになっていた。

わたしは知らなかったけど、ネット上では Shota君が消息不明になったとき、ユーチューバーのフイフイなんて女の子を含めて、大騒ぎがあったらしい。
バカバカしい。
びっくりしたのは Shota君のほうで、彼はあわてて出てきて、消息が途切れたことの弁解をしていた。
たぶん中国をおとしめるという目的を達したので、どこかで骨休めをして、タトゥーの上彫りでもしていたのだろう。

そんなにウイグル人のことが心配なら、ほかの人も新疆まで行ってくればよい。
Shota君が行けたということは、中国政府は日本人のすべてを立ち入り禁止にしているわけじゃないし、いまの新疆にはタクラマカン砂漠をつらぬく鉄道も完成していて、そのチケットは日本でも買えるはずだ(わたしがもっと若くて金があれば、率先して行ってくるのにねえ)。
日本にいて、なにかおもわくを持った人間の映像だけで、世界を見たような気になるのは危険である。
ひとつデタラメな映像があると、ほかのすべての映像が信頼できないものになってしまう。
ユーチューバー諸君は気をつけたほうがいい。

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