上海Ⅱ/秋の上海
10月末の上海は、暑からず寒からずの絶好の旅行日和。
もちろん上海を熟知しているわたしが決めたスケジュールだから当然だけど、5日間、雲の多い日はあったものの、おおむね晴天が続いた。
わたしの旅は、今回もかってのフランス租界にある錦江飯店で、前回と違うのは、レトロな旧館がいいというわたしと、別のホテルに泊まりたいというミーハーおばさんのガチンコ勝負。
いつもわがままばかりいってる手前、今回はおばさんの希望を入れて、タワーになってる新館に泊まることにした。
新館に行ってたまげたのは、客層の違いというか、むかしオーバーブッキングでエコノミーからビジネスクラスに席替えになり、そのあまりに露骨なサービスの違いに仰天したことのあるわたしが、あまりの違いにまたしてもびっくりこいた。
玄関にはけしからんドアボーイがいて(なんでケシカランかはあとで書く)、そこへつぎからつぎへと観光バスが到着し、欧米人の団体客をはきだし、ピカピカの1階フロアにはつねに彼らがあふれていて、さすがは伝統と格式のあるホテルだなと思わせられた。
ミーハーおばさんは満足そうだし、わたしも考えを改めないわけにはいかなかった。
人間相応の歳になると、やっぱり若いころのような貧乏旅行より、豪華なホテルのほうがよくなるものらしい。
しかし贅沢にどっぶりつかったとしても、わたしはいつものモーム流旅行から逸脱するつもりはなかった。
まあ、そのへんはおいおいと。
ホテルのまわりはプラタナスの並木で、歩いている人間は上等から下等までごちゃまぜだけど、それがいかにも中国らしい。
飛行機のなかで中国語のアナウンスを聞くと、それだけでなつかしい故郷に帰ってきたような気がするように、この雑踏のなかに紛れ込むと、わたしは不思議なノスタルジーにとらわれる。
日本生まれで日本育ちのわたしには、原因がわからない。
それでもこういう街の思い出をあの世に持っていけるのは幸せだと思う。
上海に着いて最初の晩は、わたしを魅了した「久久滴水洞」のピリ辛サトイモを食べに行くことにした。
おいおい、食の都、食い倒れの上海に来て、サトイモの煮っころがしかいという人がいるかも知れない。
今回はいまの季節の旬である上海蟹も食う予定で、それはあとで出てくるけど、とりあえずわたしは前回の旅でやみつきになったピリ辛のサトイモが食いたかったのだ。
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