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2026年1月31日 (土)

上海Ⅱ/ワンタンの店

まだしょぼしょぼと続いてますよ、上海紀行。
まごまごしてると3カ月前の旅になってしまうんで、さっさと終わらせたいんだけど。

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静安寺からふたたび南京東路にもどって、外灘へ向かってぶらぶらする。
5月や今回の訪中で何度も来ているところだから、べつに特別に見たいものがあるわけじゃないけど、こんなふうに目的もなしにぶらぶらするのがわたしの旅のスタイルで、NHKの「世界ふれあい街歩き」が好きなのは、歩き方がわたしの旅と似ているからである。

南京路のとちゅうに「上海ジャズ・リンカーンセンター」というジャズ専門のライブハウスがあった。
上海は租界時代の和平飯店でジャズの演奏が有名だったけど、その残滓が街の中にもあるわけだ。
わたしはロシアでもライブハウスに飛び込んだことがあるくらいこういうところが好きだけど、この日はまだ演奏をしている時間じゃなかった。

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南京路を歩いていると四川路と交差する。
四川路を500メートルほど北に行くと、蘇州河の橋を渡り、その先にわたしの御愛用のホテルだった「新亜大酒店」がある。
その近くにの路上に、鮮魚や野菜をあつかう青空市場があることを思い出した。
友人たちといっしょに見物したときは、市場のそばの汚い食堂でワンタンを食べたことがある。
最後に行ったのが2004年だから、市場や食堂がいまでもあるかどうかわからないけど、両方ともわたしがぜひ見たいところだ。
かっては何度も歩いた道だし、このくらいならあごを出したわたしにも歩けるだろう。

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落ちぶれた新亜大酒店については5月の旅のとき書いたけど、そのまえを通過して、たしかここだなと思える路地まで行ってみた。
ここでかっての市場の写真をずらずらと並べるけど(4枚組の写真も同じ市場)、残念ながら市場のあったあたりは大きな駐輪場になっていて、魚も野菜も売っている様子はなかった。

未練たらしくあたりをながめているわたしたちに、話しかけてきたおっさんがいた。
このあたりに市場はなかったっけと尋ねると、あるある、こっちだとえらく調子よくわたしたちを先導して、歩道橋を渡り、道路の向こうにある大きなビルへ案内した。
おっさんは客引きだったのだ。

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ビルの中は衣服をあつかう小さな商店がびっしりならんだ、なんとなく上野のアメ横を思わせる胡散臭いところだった。
店頭にたむろしていたおばさんたちが、バナナの叩き売りみたいに衣服を叩いて、安いよ安いよと声を張りあげる。
生鮮食品などありそうにない。
ミーハーおばさんが目配せをして、ヤバいんじゃないのという。
それで中国語で不用、不要と叫びながら退散することにした。
いまでは中国人も、スーパーやデパートでパック食品を買う時代になっているから、かって人気のあった青空市場は消滅したのだろう。
ワンタンを食べたことのある食堂もなくなっていた。

時刻は午後の3時くらいで、いくらか腹が減ったから、どこかで食事、といってもわたしもミーハーおばさんも少食だから、派手なものは食えない。
うまい具合に四川路に「雲呑」と書かれたちんこい店があった。
ワンタンにこだわるのは、これがわたしの胃袋にちょうどいい分量だからである。

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店をのぞくと、壁ぎわにテーブルが4つほど並んだウナギの寝床みたいな店で、奥のテーブルでママさんらしいのががさごそと、これは仕込みでもしてたのか。
中途半端な時間だから、店内に客はひとりもおらず、ママさんも余計なときに来たなという感じで愛想もない。
食事できますかと聞くとOKと答えたから、わたしたちは適当なテーブルに座った。

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ミーハーおばさんはまだ中国の庶民的な食堂に不信感があるらしく、なにも食べないというので、わたしだけがワンタンを注文した。
いちばん奥が調理室になっており、若い娘がひとりで働いていて、まもなく湯気のたったワンタンが運ばれてきた。
なにも食べないというおばさんだけど、見ているうちに食べたくなったらしく、わたしのワンタンをスプーンですくって2つ3つ食べていた。
美味しかったそうだ。
こういう無愛想な店は、社会主義時代の名残りだなと、わたしはミーハーおばさんに説明をする。

もっとも愛想が悪いばかりでなく、ワンタンのいっしょにビールを飲んだわたしが、トイレを借りようとすると、わざわざ店の外の公園まで案内してくれた。
公園というか路地というか、わたしひとりだったら、トイレはきっと見つからず途方に暮れていたところだ。
無愛想に見えても心遣いはあたたかい。
社会主義時代もクソもない、庶民的な店というのは世界共通の特色を持っているもんである。

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